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ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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きゅうり
今年、2回目。
シャツ1枚で、朝、家を出る。
ヒンヤリが心地いい。

ぬか漬けを仕込む気になったのは、
チャイナタウンにある八百屋でキュウリを目にしたから。
「ポリポリ、コリコリ」
頭の中で音が鳴る。

キュウリそのものは年中あるのだけれど、
日本のキュウリを見かけるのは夏の間だけのこと。
もちろん日系スーパーへ行けばいつだってある。
買わない。


「身近にある季節感は……」
考えてみるとそれほど多くはない。
スーパーの青果売り場を歩けば、
茄子、メロン、ぶどう……。
どれも年中あるし、真冬に特売をやったり。
今、いまを感じられるのは。
アメリカン・チェリーがあった。
もうしばらくすると、ゴロリとスイカが棚を占める。

文明が駆逐した最大のものは季節感かもしれない。
もっとも「不便なものを便利に」、
これが文明の原動力だから仕方ないわけだけどね。
すべては取り引き。
俳句や短歌のルールには詳しくない。
それでも、昔からある季語で今も通用するのはどれくらいあるんだろう。

そういえば週末に放り込まれてたス―パーのチラシ。
見出しは星条旗柄でデザインされた
MEMORIAL DAY SALE!!
コーン、ソーセージ、スペアリブ、ハンバーガー・バンズ……
BBQ材料たちの写真が並ぶ。
アメリカで歳時記を作るとしたら、夏の部トップはBBQだろう。
次の週末はあちこちからくすぶる炭の匂いが、
楽しげな笑い声とまじる。

カレンダーの上ではこの日が夏のはじまり。
9月のレイバー・デイまで。



朝、パブリックスペースに座っていると。
「ぺたっ、ぺたっ」
女性が近づいてきて座り、そして立ち上がった。
「カツッ、カツッ」
ビーチサンダルからヒールにはきかえ小さくなっていく後ろ姿。
夏の風物詩。
冷房の効きすぎた電車の中、
スーツのスカートの下に伸びる足先がビーサンであることは多い。
不思議なのは、日本だとこれが逆になったりする。
通勤はハイヒールで、社内でスリッパばきの人は多い。
どっちを舞台にするか。
認識の違いなんだろうか。


ビーチサンダルかイヒールにはきかえるとき、
彼女たちはどんな気持?
やっぱり、キリリと引き締まって、
背筋が伸びたたりするんだろうか。
柔道着の帯を強く締めたときのように。
陸上スパイクのひもを結んだ時みたいに
男はネクタイなのかな。
残念ながら、ぼくは結び目を首元に上げてもズルンとしたまま。
スーツは着ないし。持ってない。

ただ柔道の帯でわかるように、
身体の一部の刺激が気持ちのスイッチを動かすことはある、
道具に頼りきってしまうのはいいことではないけれど、
うまくつき合うのは構わない。
自分で制御できる便利ならば。


さて、どうしたら切り替わるんだろう。
探しちゃいるんだけど、ツマミが見つからない。
電器屋にも売ってない。
唯一見つかったのはビールだが、
困ったことにこのスイッチ、逆方向にしか動かない。


とにかく、このまま、夏でありつづけますように。
早く長袖をしまいたいんだ。


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# by seikiny1 | 2010-05-26 08:49 | アメリカ
我が心のインスタント

昨夜と同じページを読んでる。


ざるそば、インスタントラーメン、トマトソースのパスタ……。
どれもめんどくさい。
冷凍ピザ。
昼食はピザだった。

本にはいりこめない。
活字のうわべをすべるだけの目に脳は空転をつづける。

チャーシュー、千切りキャベツ、ワカメとキュウリの酢の物、冷奴。
小さな余白を作り、夕方から食べたものを数えててみる。
ビールを飲みながらポツリ。
ポツリ。
そんな食べ方だとどこかに行っちゃうのか。

冷凍庫の中にご飯はないし。
いまから米をとぎ、炊き上がりを待つ気なんてさらさらない。
大量のネギと海苔をぶちこんだ納豆丼が何度も浮かんでは消えてゆく。
スニーカーのひもを結んで何かを買いに階段を下りるなんてのは論外。

午前2時の空腹。

おなかが落ち着けばすぐに眠ってしまうだろうし、
身体によくないことだってわかってる。
それでも止められない、止まらない。


ONアンドOFFでたっぷり30分は考えていた。
冷蔵庫の中を覗き込んではため息をつき、
本にかえる。
あくびをしながら戸棚の巡回をし、
寝ている猫の横にしゃがみこみヒゲの後ろをかいた。
活字を追いながら様々な可能性の模索。
冷蔵庫にねむる竜田揚げをこの時間に食べる勇気があればいいんだけど。


ページを繰りながら、
水色の大きなキャップが浮かび上がり、まわって、定着した。

ピーナツバター・サンドイッチ。

分厚く食パンに塗ってもう1枚を重ねる。
できれば片方にはグレープ・ゼリーを塗りたいんだが……。
ないんだ。

冷たいビールが喉をおチルノと同時に、やっと活字が脳に届きはじめた。
もちろん寝る。
もう。



朝、目覚めて味を見てみる。
昨日仕込んだぬか漬けがちょっとしょっぱい。
アイデアは突然湧いてくるもの。
竜田揚げとぬか漬けで作るサンドイッチもうまいかもしれない。


昼、誘惑。
屋台というのは匂いを流すのも営業のうちなんだろう。
抗いたい誘いをねじ伏せる。
今夜はカレー味のチキンを食べるのもいいかもしれない。



「ジャックです」と手を差し出す日本人だって
午前2時の空腹に、
ピーナツバター・サンドイッチを思い浮かべることはないような気がする。


さて、今夜は。
# by seikiny1 | 2010-05-25 10:33 | 日ごろのこと
スゴロク
右手だったか、それとも左手?
小学1年生。
親指の爪下に刺さった鉛筆の芯。、
そのままにしていた。
どうやって刺さったのか、
抜かなかったのか、抜けなかったのか。
わからない。

いつかくるだろう、思い出す日が。


意外と元気そうでよかった。
あごひげが伸びているものの、きれいに刈り揃えられている。
白いものの多さから年齢を数えてみたり。
2週間前にアパートを失ってしまった隣のオジサン。
玄関の前で偶然にいきあった10分後に、
ぼくはパリにいた。

「明日あたり、プリペイドの携帯を買おうと思ってんだ。
次は電話番号教えるよ。
あ、そうそう。この間電話したんだぜ。電源切れてたみたいだけど……」
連絡手段を失するのは家をなくすより怖ろしいことなのかもしれない。
今の世は。

部屋の鍵を開けながら思い当たる。
路上にいるとはいえ、なんとか目処が立ちそうなんだろう。
元気な姿を前にして頭が回りきっていない。
「風呂は……?」
どうしているんだろう、清潔そうには見えたが。

目の前に広がるのはぼく自身のホームレス最終期。
真冬のある日、Nさん宅でシャワーを使わせてもらった。
イーストビレッジの外れに20年近く住んでいる。
かつてはアルファベット・シティーと呼ばれ、
貧困層の住む危険地帯だった。
その外れにあるアパート。
日本からの友だちの地図にドクロマークが書かれていたのは昔のこと。
ある人と会うため、その日ぼくはどうしてもシャワーを浴びなければならない。
真昼の暗い階段の壁で蛾が眠っている。
今でも白熱灯だろう、5年後も間違いなく。
芸術的と言えるほどに幾層にも落書きが重ねられたドア。
5組の錠が拒絶する。

懐かしい間取りだった。
台所の真ん中にあるシャワー。
円形に囲むアイボリーのビニールカーテン。
こんなアパートも最近のニューヨークではなかなかお目にかかれない。


フィレンツェのホテルにあった半畳ほどのガラス・キューブ。
この部屋のシャワーは隅にあった。
裏窓は架けられた絵のようにどこまでも波打つ赤茶けた瓦。


引きずるようなノックだった。
ぬるい大瓶のビール片手にドアを開けると、
「共同シャワーの水が出っぱなしだったよ」と翳りのある顔でオーナーは言う。
そんなはずはないんだが……。
ミラノの安宿、客はぼくだけ。


蒸し暑いパリの商店街入り口で見た蝋細工のようなパック寿司。
それでも「食べたいな……」と訴えてくる何か。
この手のマズそうな寿司を最初に見たのは、
スキポール空港のコンビニでのこと。
ヨーロッパに到着しMarllboroを買いに行った時だった。


ローマの繁華街にはNew York Pizzaの看板。
日本でSUSHIの暖簾を出すようなもんだ。
中国で日式鍋貼か。
モンゴルでジンギスカン鍋か。


冷えたビールがを探しに夜中のブリュセルの街へ。
どの国へ行っても頼みの綱はマクドナルドあることを知る。
なぜかハイネケン。
紙コップで飲む生ビールはあまりうまくない。


夜遅くに着いたニースで飛び込んだのは、
閉店間際の日本レストラン。
鉄板焼の店だった。
なぜか鉄火巻きが出てくる。
うまい。
それにしても、どうしてこの手の店をアメリカでは
HIBACHIと呼ぶようになったのだろう?
火鉢に鉄板なんかはのせない。
網だ。

誰が名前をつけたんだ。
名前はつけるものなのか、つくものなのか。
最初の衝撃はカリフォルニア・ロール。
24年前、ニューヨークにて。

リヨン駅から外へ出るとスト。
バスも地下鉄も動いていない。
仕方がないので山の中腹にあるユースまで歩く。
挫折。
暑さと重さでバックパックが腰の中心にこない。
大きなホテルに入りタクシーを呼ぶ。
夕暮れの、十分に湿気をたたえた古い町並みは美しく、
どこからか聞こえてくる生ギターは今も甦る。
ゆで卵入りのサラダ。



まるでスゴロクのように紐とけてゆく記憶。
未来へサイを振ってみようか。


オジサンの風呂はぼくをヨーロッパへと連れていってくれた。


スゴロクにはあがりがある。
オジサンにも、ぼくにも。


右手だっか、それとも左手?


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# by seikiny1 | 2010-05-24 08:31 | 思うこと
カポネと散歩
「見頃かな?」
足を向けてみたブルックリン植物園。
桃、白、黄色、赤、紫……
バラ園は不思議なマーブルに埋れる。

先週は一面の緑だったのに。
1週間は重い。
とはいっても、1年の1/52もあるわけで。
来週末までは瑞々しい色と鮮やかで濃い香りが無作為に混ざりあう。
閑散とした平日の植物園での皮膚呼吸。


大通りをまっすぐいけばいい。
それでも往きも還りも別々の裏道を通って。
とりあえず、ふんだんな時間だけはある。
「何か落ちてるかもしれない……」
そんな期待も片手に。

拾った。
いや、拾われた、かな。

「1980年モデルの車はヴィンテージと呼ばれる。
ぼくはいつから……?」
次第に影の長くなる裏道、そんなことを考えながら。
ゴミ袋を手に出てきた男性と目礼を交わし、
ヴィンテージ化する自分について考える。

(ん……!?)
声が。
誰だ?
「あなた日本人?」
右横に目礼を交わしたばかりの男性が歩いている。
と、いうことで1ブロック半ばかりのおしゃべり。

彼はヴィンテージ。
30年近くこのエリアに住むという。
今ではニューヨーカーに「一番住みたい」と言われるエリアに。
そんなニュースを聞くたび、こちらは家賃値上げの恐怖にかられるのだが。
みんなに嫌われてたって構わない。

かつてはイタリア人街であったこと。
3ブロック西にはアル・カポネの生家。
100年ばかり前、ぼくの家の裏にある小学校に通っていた優等生。

労働者の街であったこと。
遅い船で到着した貧しい白人たち、そしてプエルトリカン、黒人……白人。
時代の陽射しと翳、町の織りなす歴史のひだ。

名乗ることなく、訊くこともなく。
彼は7番街を南へ折れていく。
また逢う日まで。
Ciao!

アル・カポネ。
彼の生家のあたりを歩き、小学校の前、建物を見上げる。
大通りに出ると、車にも人にも普段よりエネルギーを感じる。



あの初老の日本人は本当に隣を歩いていたんだろうか?


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# by seikiny1 | 2010-05-22 10:47 | 日ごろのこと
抑止力
交差点で立ち止まる。
歩道からおりて数歩のところ。
信号は赤。青になると白になる。
エンジン音が大きくなって、小さくなる。

信号が白に。
横断歩道と平行に引かれた白線で立ち止まる車。
たまにはみ出るヤツもいる。
それでも、ほとんどは行儀よく地面に描かれた印で立ち止まる。
もし、白線がなかったら……。
車たちは横断歩道近くまでにじみ出てくることだろ。
人に節操というものはあまりない。

10年ほど前、耳にしたこと。
「どうせひかれるんだったら、横断歩道の枠内でやれ」と。
内と外では補償金の額がまったく違ってくるらしい。
そんなことが、どこかにひっかかっているのか、
ぼくは横断歩道の真ん中を渡る。

1本の線。
踏み越えるにはなんの物理的障害はない。


アメリカでビルの屋上へ出られるところは少ない。
ほとんどの場合、堅牢な錠がおりている。
日本だと、
涼みに出たり、
月を見に上がったり、
仕事をサボったり、
ビールを持って花火見物をしたりできるのに。
もちろん宙に身をまかせることだってできる。
そこにあるのは申しわけ程度のフェンスばかりなのだから。
鳥籠の中にいるようなエンパイアステート・ビルの展望台。
そんなところからだって、たまに鳥になる人はいる。
大切なのはそこに線があるか、ないか。
一拍という時間は短く、長い。


垣根なんて、
塀なんて、
門なんて、
簡単に乗り越えるこができる。
戦国時代の濠や城壁とは違う。
それでも、人々は築く。
肉体を拒むものとしてではなく、
あいつの、そして自分の脆弱な精神を映し出す鑑として。
塀の上を歩く猫たち。

さて、ぼくを抑止しているものはなんだろう?
いいことなのか。
それともわるいことなのか。

とりあえず抑止力を振り払い飲みに行こう!




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# by seikiny1 | 2010-05-21 05:30 | 日ごろのこと
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