たばこを巻きながら○×さんのことを想い出していた。
今頃どうしているだろう?
元気でいるだろうか?
人は僕のことを何を見た時に思い出すのだろう?
足跡をつけたり、つけられたり。
もう半年になる。彼がいなくなって。
いつも元気な笑顔を見せていてくれていたのだけれど、突如帰国してしてしまった。
今思い出してみると「助けて」というサインを彼は何度か送っていた。
それを見落としていた、まっすぐに向き合うことのなかった自分が情けなくもある。
去年の今頃は、サーフィンで真っ黒になった顔にいつも白い歯を覗かせていたのに。
誰も彼の連絡先を知らない。
彼も巻きタバコの愛用者だった。
ビレッジの喧騒の中でたばこを巻きながら彼のことを思い出していた。
「今も巻いてるのかな?それとも(まだ)たばこの安い日本では普通のものを吸っているのかな?」
彼の愛用のzippoには<ショート・ホープ>のマークが刻まれていた。
今頃はショッポを吸っているのかもしれない。ひとつ前の夏のことを思い出しながら。
今まで色々な人が僕の前を通り過ぎていき、僕も通り過ぎてきた。お互いに足跡を残しながら。
自分のスケッチブックをパラパラとめくりながら、そんな足跡から過ぎ去ってしまった人のことを思い出すことがある。
その人がスケッチブックを繰りながら、記憶の彼方でうずくまっている僕のことを見つけることもあるのだろう。
いったいこの先、どれだけの足跡をつけ、つけられるのだろう。
もっともっと足跡をつけ、つけてもらおう。
見返すためではなく、見返してもらうためだけではなく。