“This is Pearl Harbor! This is Pearl Harbor!”
約五分おきに連呼するアナウンサーの声が今でも耳に残っている。2001年9月11日の出来事。
その日、僕はたまたまニュージャージー州のホーボーケン市にいた。地図上で見るとハドソン川の対岸にはワールド・トレード・センター(WTC)が<あった>。雑踏をかきわけて川に近付くと、WTCからもくもくと煙が立ち昇っている。その日は一日中ラジオのニュースを聴いていた。
1941年12月8日(日本時間)真珠湾の米国海軍基地が日本軍により爆撃され壊滅的な打撃を受け、これを引き金にアメリカを戦争に引きずり出してしまった。このときのラジオの報道はどういうものだったのだろう?たぶんWTCの時と同じ感じではなかったのだろうか。皆が興奮して戦況を伝えていたのだろう。そして翌日のニューヨークタイムスも、どこのニューズスタンドでも同様に売切れてしまっていたのだろう。「俺達がやられた!」、という報道。
アメリカでは今でもこの日になると、このニュースが各報道機関によって流される。さて、日本ではどう報道されているのだろう?僕自身はアメリカに来るまでは、真珠湾攻撃の事実は知っていたけれど、それがなされた具体的な日にちは知らなかった。だが、この地に来たその年に知り、今では忘れることが出来ない。いやでも思い出させられる日となってしまった。たぶん今でも日本での認知度は低いだろう。
一方アメリカでは、広島と長崎に原爆を投下された日を知る人は少ない。これも日本と同様にあまり報道されないからだろう。はたして原爆が投下された事実を知っているアメリカ人がどれくらいいるのだろうか?
国の指導・規制なのだろうか、日本とアメリカだけなのだろうか?国家の失点、汚点となるニュースはその国では流れにくい。いまだに<大本営発表>の様な報道しかなされていない。いいところ、悪いところひっくるめて付き合っていかなければ何も問題は見えてこない。何の解決にもならない。所詮、歴史と一緒で強者や勝者が作り、操作していくものなのだろうか。悪い所(事実)を見せようとすると事前につぶされてしまう。事実を事実として認識して伝えていかなければ何も残らないし、前進はしない。
ここに二つの事実。
アメリカの国土を攻撃したのは、第一番目が日本。そして二番目が同時多発テロ。
真珠湾攻撃以降アメリカは積極的に武力を他に対して行使するようになった。そして今では誰も止める事は出来ない。
今のアメリカの姿勢と日本は全く無縁ではないということを、忘れないようにしていこうと思う。ただ、非難するだけではなく。そして自分がこれまでにやってきたことから目をそむけずに。いや、凝視していきたいと思う。
ほんの少しでも平和になるように。
2001年9月12日
まるで申し合わせたかのように、ラジオからPearl Harborという言葉が聞こえなくなった。