「見頃かな?」
足を向けてみたブルックリン植物園。
桃、白、黄色、赤、紫……
バラ園は不思議なマーブルに埋れる。
先週は一面の緑だったのに。
1週間は重い。
とはいっても、1年の1/52もあるわけで。
来週末までは瑞々しい色と鮮やかで濃い香りが無作為に混ざりあう。
閑散とした平日の植物園での皮膚呼吸。
大通りをまっすぐいけばいい。
それでも往きも還りも別々の裏道を通って。
とりあえず、ふんだんな時間だけはある。
「何か落ちてるかもしれない……」
そんな期待も片手に。
拾った。
いや、拾われた、かな。
「1980年モデルの車はヴィンテージと呼ばれる。
ぼくはいつから……?」
次第に影の長くなる裏道、そんなことを考えながら。
ゴミ袋を手に出てきた男性と目礼を交わし、
ヴィンテージ化する自分について考える。
(ん……!?)
声が。
誰だ?
「あなた日本人?」
右横に目礼を交わしたばかりの男性が歩いている。
と、いうことで1ブロック半ばかりのおしゃべり。
彼はヴィンテージ。
30年近くこのエリアに住むという。
今ではニューヨーカーに「一番住みたい」と言われるエリアに。
そんなニュースを聞くたび、こちらは家賃値上げの恐怖にかられるのだが。
みんなに嫌われてたって構わない。
かつてはイタリア人街であったこと。
3ブロック西にはアル・カポネの生家。
100年ばかり前、ぼくの家の裏にある小学校に通っていた優等生。
労働者の街であったこと。
遅い船で到着した貧しい白人たち、そしてプエルトリカン、黒人……白人。
時代の陽射しと翳、町の織りなす歴史のひだ。
名乗ることなく、訊くこともなく。
彼は7番街を南へ折れていく。
また逢う日まで。
Ciao!
アル・カポネ。
彼の生家のあたりを歩き、小学校の前、建物を見上げる。
大通りに出ると、車にも人にも普段よりエネルギーを感じる。
あの初老の日本人は本当に隣を歩いていたんだろうか?