ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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名前のない馬
名札を持つ小さな騒音にもまれりよりも
しっぽを失った轟音に洗われていたい
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by seikiny1 | 2008-01-27 12:50 | 思うこと
バターサンド
「ファンタ グレープフルーツが出たよ」
 日本からメールが舞い込んできた。
「おっ!」と目を引く飲み物と出合ったのもその日だった。
こちらはペプシ。今のものではなく、その昔使われていた王冠に筆記体で書かれたロゴが青地に浮かんでいる。ファンタがペットボトルで、ペプシはアルミニウム缶というのは今の時代の鏡だろう。

<レトロブーム>なんて言われはじめていったいどれくらいが経つのだろう?
 懐古趣味という言葉があるくらいだから、遠い昔から人間の中にはそんな部分があったんだろう。それだけ旧いものに愛着や、郷愁を感じ続けているということで、<レトロブーム>とはそれが十分ビジネスとして成り立つことの証でもある。
 たしかに旧いものには惹かれるものがあるし、美しくもある。嫌な思い出すらも、時間というフィルターにかければ角が取れまろやかになってくる。時間というものは不思議だ。
 幸せなんだろう。「憎くて、憎くて」、「いやで、いやで」、「恥ずかしくて、恥ずかしくて」……、そんな出来事がない。いや、ただ鈍感で物忘れがひどいだけか。
 30年前、ベルボトムに代表されるフレアパンツで街が再びあふれかえるなんて想像だにしなかった。しかし、「古く」、「はずかしい」ものではなく「新しい」と見る若い人の目で定着していき、こちらはこちらで、そんな街の情景にも慣れっこになってしまった。はずかしいなんていう感情はどこかに忘れてきてしまっている。
 時間のフィルターにはある程度の厚味が必要だ。

 小雨の降り続いた翌朝は季節はずれの日本晴れ。気になって調べてみると、室町時代の頃<日本>は<very>という意味で使われることが流行していたらしい。雑学終わり。
 ぬけるような青空を見上げていたらうずうずしてきてしまい、朝の町に飛び出す。歩道に並べられた白や水色のゴミ袋に出来た小さな水たまりがキラキラと朝日をはねかえす。しっとりと湿った町は文字通り水々しく、息をしているようでもある。
 目的地へ着き、そして帰ってきた。
 朝飯を買ってきた。近所で評判の店で買ったベーグルを半分にスライスし、室温に戻しておいたバターを塗る。まわりはカリッとしていて、中身はしっとり、モチモチしている。噛めば噛むほどバターの甘味が口中に広がっていく。そういえば昔はバターが好きではなかった。
 あの頃、ハムや野菜なんかが入ったサンドイッチはよそ行きの食べ物だった。身近なサンドイッチ、いやサンドといえば駄菓子屋のガラスケースの中に入っているジャムサンドとバターサンド。セロファンの袋入りで、三角に切られた薄い食パンにジャムを塗られたものがひとつ。バターを塗られたものがひとつ仲良く肩を並べていた。
「どうしてジャムサンドがふたつはいってないんだ」
 いつも先に食べてしまうのはバターサンド。
 日本晴れのベーグルはバターサンドの味がした。
 今、バターサンド、ジャムサンドなんていう食べ物はあるのだろうか?

 小さな頃よく歌っていた歌

♪食パンがお嫁に行くときは
ジャムとバターにはさまれて
洋食皿にのせられて
着いたところは喫茶店♪
(「おたまじゃくしはかえるの子」のリズムに乗せて)

 懐古。
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by seikiny1 | 2008-01-19 01:11 | 日ごろのこと
You have luck!
 新年あけましておめでとうございます。
 非常に遅くなってしまいましたが、無事新年を迎えることができています。「やれやれ」と思うことはありましたが。

 年末から5日までは1行も本を読みませんでした。年末にめがねをなくしちゃったんです。
 2日はこの冬最高の冷え込みでした。朝、裸になってシャワーの下の立ちつまみをひねったのですが、いつまでもお湯になりません。昼ごろになって気づいたのですが、暖房もカチンとすらいっていませんでした。夕方、大家に電話すると、
「ガス欠なんや……」
 11時頃、タンクローリーがボイラーにオイルを流し込んでいきました。

 新年早々この二つを経験して思ったのは、
「なければないで何とかやっていけるもんだ」ということ。まぁ、それが永遠に続くとなるとまた別の話ですが、本がなくても他にやることはある。数十年前まで、つまみをひねるだけでお湯が出てくるなんて誰も想像すらしなかったでしょう。そういえば日本のどこかで蛇口からジュースの出てくるところがあると聞きましたが。

 どうしようもなく、1月5日に55セントのカツカレーを食べに出たついでにめがねを買いました。蛇口からはあたり前のようにお湯が出てきます。
 さて、ここで今年の抱負です。
《スリムになる》
 たしかに、さすがに、おなかまわりが少しゆるくなりつつはあります。しかし、抱負はダイエットではなくて、削るということ。必要なものを見極めること。不必要なものにはあまり手を出さないこと。
 たとえば、毎日惰性で取っているフリーペーパー。いつも平積みにされたそれを腰をかがめてつかみながら、ゴミ箱に放り投げている自分の姿がよぎります。どこのゴミ箱に行くかまでわかりきっているんです。打率は9割程度ですかね。
 たとえば、たばこ。建物に入る時に、
(とりあえず喫っとこうか……)
と声にならないひとりごとを発しながら口にする一本。おいしいと思ったことはあまりないんです。

 めがねをなくした次の日、記憶をたぐりながら可能性のあるところにはすべてあたりました。もちろんタクシー会社にも。「メールで紛失届けを出せ」と言われたので、すぐにタクシーの番号、乗った時間、行き先などを書いて送信しました。12月30日のことです。年が明けても、朗報どころか受領の通知すら来ません。こんなところがアメリカらしくて決して嫌いではないのですが、当事者になるとやっぱりものの見方も変わるものです。こちらも9割程度あきらめていました。そんなこともあった、5日にめがねを買ったのです。

 今日、11日は去年の夏以来となるクィーンズ地区へと行って来ました。相変わらず好きになれない街並み。なにか「ピン」と来るものがないんです。それでも開発が進み、以前は寒々とした倉庫がひしめき合っていたエリアの中にデザイン事務所やギャラリーなんかがちらほらと見受けられます。それでも、まだまだ、昔ながらの寒々としたエリアです。
 信号待ちをしながら、
「なにかがおかしい」
 どこか不自然なんです。焦点の定まらない僕の目が何かを拾っているんです。
 信号機でした。これは〈青〉の時は白いLEDで歩く男性が浮かび上がり、〈赤〉の時は赤いLEDで広げた手のひらが映し出されるんです。「STOP」と止めているのでしょうか。

 小指の第二関節から先がなくなっていました。数年前、信号機の入れ替えを実施するに当たって「電球からLEDに変わるのでエネルギーの節約になり、電球が切れるといったこともほとんど起こらない」とえらい人が言っていたような気がするのですが、小指が切れてしまったようです。
 そんな街を通り過ぎながら10分ほど歩いて、ある会社の事務所に入っていきました。
 60過ぎに見える男性は、僕の用件を聞くなり、とても大きな笑顔で、聞き覚えのある大きな声で言いました。
“You have luck!”
 右手には見覚えのある黒いケースが。
 昨日のことでした。タクシー会社からメールがあり「あるかどうかはわからないけれど」と、僕が乗った車の車庫の電話番号を教えてくれたんです。今朝、かけてみると。
 一度は何かの手違いで切れちゃったんです。深いため息をつきながら、話の途中であったこともあり、それでも気を取り直してかけてみると。数分後、今目の前にいる男性が電話口で叫びました。
“You have luck!”
 めがねがみつかったんです。
 受け取る時に、宙に手を漂わせている彼。空になった手が寂しかったんでしょうか、その手にリンカーン元大統領の顔と5という数字の描かれた緑がかった紙をかわりに握らせてあげました。
 
 どうやら今年はそう悪い年でもないようです。
 今年の抱負は《スリムになる》。
 新年早々余分な買い物をしてしまいましたが、それはとてもいい買い物をしたような気がします。必要なものだけで生きていくのはさびし過ぎる。ちょっとずつ、本当にいらないものを減らすだけでいい。
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by seikiny1 | 2008-01-12 15:21 | 思うこと
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