ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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カテゴリ:日ごろのこと( 127 )
引越日和
家賃ほどバカげたものはありゃしない 人は家買い僕はオクスリ




そんなわけで6年ほど路上に。

交通の便、住環境、家賃、ペット、家族、転勤……。
引越しには様々な理由がある。
差し迫ったものもの。
「そろそろ……」というもの。
「そろそろ……」と思ってはいても、
引越しの実際を想像するだけで気は重くなり先延ばし。
「そろそろ……」のほとんどは、住もうと思えば住めるから。


これまでに何回の引越しをしてきたか?
NYC→CHICAGO→LA→CHICAGO→NYC
大都市間だけで4回。小さなものを入れると両手、両足では足りない。
あの6年間をあわせると、あたりまえだが、2000回はくだらない。
ほぼ毎日が引越しだったから。


今日、引っ越しをする。
0円から0円へ。
とはいっても仮想空間上、ブログの引越。
アドレス(住所)も入れ物も変わるのだからこれも引越しだ。

シェルターに住むホームレスの口から「満足」という言葉は出ない。
無料ブログとはいえ、長く住めばアラも目立つ。
「隣の音がうるさい」、「ねずみが出る」、「シャワーが冷たい」……。
引越しと同様、「そろそろ……」レベルの文句ではあるのだけれど。



「そろそろ……」の腰を上げたきっかけは、友人がはじめたブログ。
早速コメントをしようとおもったら。
できない。
会員でなければできないということ。
そんなわけで会員になり、ついでにブログを作り試用すること2ヶ月。
釘も打てるし、ペットも飼える。交通至便。
住み心地も悪くはないので、「そろそろ……」の腰を上げた次第。
「そろそろ……」から3年がたっていた。
こんなところが、ぼくがぼくである所以なんだろう。


今日は晴れ。
月末でもあり、引越トラックがあちこちに停まる。
来る者あり、去る者あり。
散歩の途中、このところ探していた植木鉢を拾い、今日の引越しを決めた。


引っ越します。



エキサイトではみなさんに長らくお世話になりました。
5年半という歳月。あと半年で小学校の卒業証書。
登校日数のたらないときもあったけど。

ブックマークして下さっているみなさん、お手数ですが下記URLに変更ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

NY狂人日記



*引越しで失うものは多い。
だからこそ、ぼくのように植木鉢を拾うニンマリ男もいるわけで。
エキサイトからアメブロへは記事の引越しはできないらしく、
今日までのものはこのままに。
まさに、身ひとつでFurnished Roomへお引越し。


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by seikiny1 | 2010-05-31 09:55 | 日ごろのこと
雷雨、月をつかみに
「あるはずなんだがなー……」
あるべきものが見つからないのはきもち悪い。
別に、あるべき場所になくってもいいけれど。
自分のものであれば、またいつかどこかで。
大抵の場合、なんとか気持ちを抑えつけることができる。

昨日からCup Noodleが食べたくて。
ビールを空にして出向いた近所のスーパーにはない。
いや、BEEFとCHICKENはあるんだが。
食べたいヤツがない。
思い描いていた絵が破れていく。

悪魔の囁き。
「Chilli Limeはおいしいよ」。
たまにではあるけれど、悪魔に魂を売るときがある。
まさに昨夜がそんなときだった。
ちなみに昨夜は満月の一日前、そんな夜だったせいか。

結局はビール4本の勢いで、
「ま、いいか」
と、いさぎよい。

しかし、
月の軌道と同期するかのように大きくなる一方の妄想。
「よし、あしたは誠心誠意さがしてみよう」
気持ちを寝技で押さえ込み、夜が明けてからのルートを考えてみる。


蒸し暑い……。
サンダーストームの予報に変更をした予定。
今日は傘を持って歩く気がしない。
かといって、レインコートでは心もとないし。
昼過ぎからのお店廻り。
4軒のスーパー、2軒のファーマシー。
それはともかく、
どうしてアメリカの扇風機って涼しくないんだ。
勢いはあるが風が細い。


2年前か、3年前か。
定かじゃないが見たことはある。
しかも徒歩5分にある昨夜のスーパーで。
似たようなものが数種あり、
TABASCOロゴが入っていたり、唐辛子マークがかわいくカーブしていたり。
あの日買ったものにはTABASCOの小さな袋が入っていた。

今ではCHICKENとBEEFだけ。
PORKすらもない。
その上、棚占有率でライバルに完敗。
MARUCHANの半分ほどの量しかなく、以前と立場が逆転している。
お見合い結婚の前後みたいだ。

問屋筋との取引なんてのもあるだろう。
その上、ここ数年、このエリアの白人率の上昇は凄まじい。
プエルトリカン、黒人たちが駆逐され、
白人たちが「わが街を!」と社会活動に元気がいい。
以前、殺風景だった商店街が今ではトレンドとしてテレビや雑誌に。
健康オタクの多いこの人種にとってCup Noodleなんてのは、
ノン・スモーカー vs スモーカー
そんな図式にも似ているのかもしれない。
公式だと、
Ramen Noodle=貧乏人
そんなのもある。
ニューヨークのレストランではここのところRamenブームだが、
それとインスタントはまったく別の世界にいまだにある。
それよりも出されたラーメンはすぐに食って欲しい。
ま、日本でもインスタント・ラーメン文化は独自世界を築くが。


実はこのChilli Lime味。
アメリカ西海岸の人が教えてくれたもの。


《食の境界線》というのがあるらしい。
そこを超えると、
天ぷらにはソースであったり、天つゆであったり。
赤飯に砂糖を入れたり。
そんな線。
もしかしたらCup Noodleにも境界線?



結果は、昨夜よりはマシというものだった。
マシという価値観はどこか悲しいね。
なぐさめられてるみたいで。
妥協。
Spicy Chilli ChickenとShirmp Picante Styleで手を打つことに。
こだわりを質に入れ安楽を手に入れる。
こだわりと。そして妥協……。

「こだわるっていうのは、結局、楽に生きるってことなんだよねー」
ミッキー・カーチスさんの声が聞こえてくる頭をふりふり帰途へ。

遠くで雷が鳴り出した。
月が見れない。





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by seikiny1 | 2010-05-28 08:27 | 日ごろのこと
我が心のインスタント

昨夜と同じページを読んでる。


ざるそば、インスタントラーメン、トマトソースのパスタ……。
どれもめんどくさい。
冷凍ピザ。
昼食はピザだった。

本にはいりこめない。
活字のうわべをすべるだけの目に脳は空転をつづける。

チャーシュー、千切りキャベツ、ワカメとキュウリの酢の物、冷奴。
小さな余白を作り、夕方から食べたものを数えててみる。
ビールを飲みながらポツリ。
ポツリ。
そんな食べ方だとどこかに行っちゃうのか。

冷凍庫の中にご飯はないし。
いまから米をとぎ、炊き上がりを待つ気なんてさらさらない。
大量のネギと海苔をぶちこんだ納豆丼が何度も浮かんでは消えてゆく。
スニーカーのひもを結んで何かを買いに階段を下りるなんてのは論外。

午前2時の空腹。

おなかが落ち着けばすぐに眠ってしまうだろうし、
身体によくないことだってわかってる。
それでも止められない、止まらない。


ONアンドOFFでたっぷり30分は考えていた。
冷蔵庫の中を覗き込んではため息をつき、
本にかえる。
あくびをしながら戸棚の巡回をし、
寝ている猫の横にしゃがみこみヒゲの後ろをかいた。
活字を追いながら様々な可能性の模索。
冷蔵庫にねむる竜田揚げをこの時間に食べる勇気があればいいんだけど。


ページを繰りながら、
水色の大きなキャップが浮かび上がり、まわって、定着した。

ピーナツバター・サンドイッチ。

分厚く食パンに塗ってもう1枚を重ねる。
できれば片方にはグレープ・ゼリーを塗りたいんだが……。
ないんだ。

冷たいビールが喉をおチルノと同時に、やっと活字が脳に届きはじめた。
もちろん寝る。
もう。



朝、目覚めて味を見てみる。
昨日仕込んだぬか漬けがちょっとしょっぱい。
アイデアは突然湧いてくるもの。
竜田揚げとぬか漬けで作るサンドイッチもうまいかもしれない。


昼、誘惑。
屋台というのは匂いを流すのも営業のうちなんだろう。
抗いたい誘いをねじ伏せる。
今夜はカレー味のチキンを食べるのもいいかもしれない。



「ジャックです」と手を差し出す日本人だって
午前2時の空腹に、
ピーナツバター・サンドイッチを思い浮かべることはないような気がする。


さて、今夜は。
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by seikiny1 | 2010-05-25 10:33 | 日ごろのこと
カポネと散歩
「見頃かな?」
足を向けてみたブルックリン植物園。
桃、白、黄色、赤、紫……
バラ園は不思議なマーブルに埋れる。

先週は一面の緑だったのに。
1週間は重い。
とはいっても、1年の1/52もあるわけで。
来週末までは瑞々しい色と鮮やかで濃い香りが無作為に混ざりあう。
閑散とした平日の植物園での皮膚呼吸。


大通りをまっすぐいけばいい。
それでも往きも還りも別々の裏道を通って。
とりあえず、ふんだんな時間だけはある。
「何か落ちてるかもしれない……」
そんな期待も片手に。

拾った。
いや、拾われた、かな。

「1980年モデルの車はヴィンテージと呼ばれる。
ぼくはいつから……?」
次第に影の長くなる裏道、そんなことを考えながら。
ゴミ袋を手に出てきた男性と目礼を交わし、
ヴィンテージ化する自分について考える。

(ん……!?)
声が。
誰だ?
「あなた日本人?」
右横に目礼を交わしたばかりの男性が歩いている。
と、いうことで1ブロック半ばかりのおしゃべり。

彼はヴィンテージ。
30年近くこのエリアに住むという。
今ではニューヨーカーに「一番住みたい」と言われるエリアに。
そんなニュースを聞くたび、こちらは家賃値上げの恐怖にかられるのだが。
みんなに嫌われてたって構わない。

かつてはイタリア人街であったこと。
3ブロック西にはアル・カポネの生家。
100年ばかり前、ぼくの家の裏にある小学校に通っていた優等生。

労働者の街であったこと。
遅い船で到着した貧しい白人たち、そしてプエルトリカン、黒人……白人。
時代の陽射しと翳、町の織りなす歴史のひだ。

名乗ることなく、訊くこともなく。
彼は7番街を南へ折れていく。
また逢う日まで。
Ciao!

アル・カポネ。
彼の生家のあたりを歩き、小学校の前、建物を見上げる。
大通りに出ると、車にも人にも普段よりエネルギーを感じる。



あの初老の日本人は本当に隣を歩いていたんだろうか?


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by seikiny1 | 2010-05-22 10:47 | 日ごろのこと
抑止力
交差点で立ち止まる。
歩道からおりて数歩のところ。
信号は赤。青になると白になる。
エンジン音が大きくなって、小さくなる。

信号が白に。
横断歩道と平行に引かれた白線で立ち止まる車。
たまにはみ出るヤツもいる。
それでも、ほとんどは行儀よく地面に描かれた印で立ち止まる。
もし、白線がなかったら……。
車たちは横断歩道近くまでにじみ出てくることだろ。
人に節操というものはあまりない。

10年ほど前、耳にしたこと。
「どうせひかれるんだったら、横断歩道の枠内でやれ」と。
内と外では補償金の額がまったく違ってくるらしい。
そんなことが、どこかにひっかかっているのか、
ぼくは横断歩道の真ん中を渡る。

1本の線。
踏み越えるにはなんの物理的障害はない。


アメリカでビルの屋上へ出られるところは少ない。
ほとんどの場合、堅牢な錠がおりている。
日本だと、
涼みに出たり、
月を見に上がったり、
仕事をサボったり、
ビールを持って花火見物をしたりできるのに。
もちろん宙に身をまかせることだってできる。
そこにあるのは申しわけ程度のフェンスばかりなのだから。
鳥籠の中にいるようなエンパイアステート・ビルの展望台。
そんなところからだって、たまに鳥になる人はいる。
大切なのはそこに線があるか、ないか。
一拍という時間は短く、長い。


垣根なんて、
塀なんて、
門なんて、
簡単に乗り越えるこができる。
戦国時代の濠や城壁とは違う。
それでも、人々は築く。
肉体を拒むものとしてではなく、
あいつの、そして自分の脆弱な精神を映し出す鑑として。
塀の上を歩く猫たち。

さて、ぼくを抑止しているものはなんだろう?
いいことなのか。
それともわるいことなのか。

とりあえず抑止力を振り払い飲みに行こう!




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by seikiny1 | 2010-05-21 05:30 | 日ごろのこと
年に1度の常連
年に1度だけ立ち寄る店。
「1年に1度だけ」と決めているわけではないけれど、
結果的に1年に1度となり、そんなことが続いている。
最初に入ったのは夕立から逃れるため、5年前だった。


人ごみは大嫌い。
そんなぼくでもこの日だけは、
自らすすんで一片のゴミとなる。
毎年、近所で開催されるBrooklyn Fifth Ave. Festival。
地元の縁日のようなもの。
イカ焼きや金魚すくいはないけれど、シシカバブ―や射的がある。

毎年つまむ手巻き寿司。
今年はネギハマではなくただのハマチ巻。
$3.00也。

もう1軒の<日本人が経営する>日本レストラン。
周囲の派手さに飲まれて、毎年、引っこんで見える。
あやうく見落とすところだった。
店主の奥さんらしき女性の発する
"SUSHI!"、"COLD SAKE!"の声もあっという間に人ごみが吸いとっていく。

銀行近くでは今年も20台近くのビンテージ・カーが勢ぞろい。
「1932年型 ポンティアックよ。私のなの」と、道行く人に微笑みかける老婆。
去年も出品されていた黒色の1959年型 トライアンフ:TR3A。通称<トラサン>。
1980年型 オールズモビルを発見し、
いつの間にか1980年がそっちの時代に属するようになったことを知る。
そういえばNYのオールディーズ局:CBS FMからも、
最近はぼくが過ごした時代の曲が流れるようになっている。
Oldies But Goodiesか?

アニマル・シェルターのブースには、
里親を求める猫たち、犬たち。
今年も人だかりがするのは仔猫たちのケージ前。

たまに立ち寄るバーの前。
The Tru Britというバンドが今年も演奏をしている。
青シャツにユニオン・ジャックのネクタイというお揃いのいでたちで、
ストーンズ、キンクス、ビートルズ、フー、ゼム……
British Invasionと呼ばれた1960年代イギリスの名曲ヒットパレード。
拳をふり上げながら踊り狂う60近い男性の姿までが去年と同じだ。

新聞、銀行の勧誘。
サングラス、アクセサリー、工具、Tシャツ、寝具、アンチック……。
レモネード、焼きトウモロコシ、タイ料理、ホットドッグ、チーズステーキ・サンド……。
実演販売、あちこちで連呼される商品名……。
炭火の煙、炙られる肉の匂い……。


1時間かけて20ブロックほどの歩行者天国を蛇行し、
終り近くにある喫茶店に寄る。
$1.50のスモールサイズ・コーヒーを紙コップで。

いつもの小さな店。
最近では珍しくでWiFi設備(無線LAN)がない。
過剰な人だかりもなく、ゆったりと本が読める。

違っていたのはカウンターの向こうにいる人くらいのもの。
背の高い寡黙な男から、
健康的な笑みを浮かべる2人の若い女性へ。
時折り抱き合いながら話をするのは、ゲイだからだろうか。
どうでもいい。

今年はすぐに座ることができた。
そういえば、年々アイスコーヒーを頼む人が増えてきている。

ラップとしては比較的落ち着いた曲を背景に本を広げる。
いまひとつ。
音楽と読書がしっくり噛みあわず、開高健の世界に半歩ほどしか入っていけない。
「こんな音楽にはどんな本を持ってくればよかったんだろう?」
ビートとたけし?村松友視?万能薬の東海林さだお?
いや、この広い世界、
ラップで開高健を読む人もたくさんいるだろう。
そこから生まれてくるものは、ぼくには想像もつかない世界かもしれない。


錯覚……。
本から目を上げて考えごとをしていたら、不思議な気分に包まれていた。
今、この時。
1年前、2年前のこの場所に自分が移されても、
きっと何の違和も感じないんじゃないだろうか。
少なくとも世界はなにごともなかったかのように回っていく。
延々と続く時間。
永遠に終わることのないループを歩む。
また1年が過ぎ、またここに座る。
そして、また、ぼくは1年前の時に移されていいく。

1年前と変っているのは。
手巻き寿司から消えたネギ、ゲイのカウンター・パーソン、BGM、アイスコーヒー。
そんなもの。

いつの間にかBGMがスティーヴィー・ワンダーになっている。


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by seikiny1 | 2010-05-18 08:16 | 日ごろのこと
追いかけられて
あてもなく外へ。
図書館で借りた本と水筒をかばんに放り込んで。

外で本を読むのは……。
通り過ぎる車の音、
ひとりごとのやまない男、
遠くから聞こえるパトカーのサイレン、
……
そんなすべてのものを自然として受け入れていながら。
街に溶けこんで本の世界へと入っていく。

本の一部となりつつも、
「日が暮れたら帰ろう」
と、こかで決めている正気の自分。
陽光で文字を拾いづらくなったら歩こう。


なんだか暗くなってきた。
それにしても、少し様子がおかしいような。
そういえば、前日流していたニュースのどこかで、
「サンダーストーム」という言葉を聞いたような、聞かなかったような。

それにしても自信がない。
考えてみると、昼間から夜。
一方が少しずつ増え、もう一方が減っていく。
等量になり一方がゼロに近づいていく。
そんな時間を屋外で過ごすのは久しぶりだった。
夕暮れという感覚が欠落している。
それにしても自信がない。


念のため。
帽子代わりに巻いていた麻の葉柄の和手ぬぐいを脱いで、
手帳と本をくるみ、レジ袋でおおう。
再度レジ袋に入れ、かばんのフラップを下ろして立ちあがる。

歩き出して半ブロックも行かぬうちにあたった。
「ポツリ」
たまたま木陰のベンチに坐っていたからあたらなかっただけなのか。
木の下では雨が上がった後でも雨が降る。
無数の葉がたたえている、それ以上の水滴が、
空気の動きで、重力で雨を降らせる。
あれは雨粒なのだろうか?
それとも既にただの水滴になってしまっているのだろうか?

そんなことを考えながら歩いていると、
次のブロックだけで雨粒の当たる頻度が確実に数倍になり早足に。
歩きながら再度かばんのフラップを上げ、
2重にしていたレジ袋の1枚を取りノートをくるむ。
身体は濡れても一向に構わないが、道具は困る。

前を横一列になってゆっくりと歩いていく、
黒人ベビーシッター数人と白人子供たち。
追い抜きながら。
どうしてだろう?
右肩越しに不意に振り返っていた。
普段、歩きながら振り返ることなんてほとんどないのに。

ほんの少し前、過去となったところ。
先ほど通り過ぎた交差点でバスが信号待ちをしている。
斜めに道路を横切って何とか乗り込む。

普段だったらこんな距離で乗ることは絶対ないのに。
1つ目のバス停で乗り込んできた日本人の女の子はぼくの前に座り、
ぼくは3つ目のバス停、Smoke Shop前で降りる。
「あ、そろそろ缶入りタバコを買っとかなきゃ……」
"Thanks."
運転手に礼を言いながら
(この国のバスにも車掌という人が乗り込んでいた時期があったのかな?)
などと考えたが、歩道に片足がついた途端にタバコのことともに飛んでしまう。

雨脚はかわっていない。
それでも早足で50mほどをを歩く。
自分の体のためでもなく、道具のためでもない。
窓を開けていくのを忘れていた。


帰り着くと3匹の猫達が。
窓ガラスににブチの入りの肉球を密着させてはりついていた。
タダイマ。




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by seikiny1 | 2010-05-17 08:18 | 日ごろのこと
I'm living on the street, man......
悪い季節じゃない。
あくまで冬と比較してだけれど。


去年、風が冷たくなりだした頃、突如、出現した大きな白い看板。
2週間ほどで"Under Contracted"の小さな看板が増えていた。

「どうすんの?」
最初にきいてみたのは昨年の12月。
「どうしたの?」
の問いには答えてくれなかった。
大晦日の夜にに降る雨。
ぼくは飲み屋へと向かい、カッパを着たオジサンは道具を外へ出す。
「猫のこと頼むよ……」
うつむきながら。

「家族の事情を考慮してくれて、しばらく延ばしてくれたよ」
陽気に期日延期の話をしてくれた年明け。
「がんばってね」
翌日、ぼくは少しだけ明るい気分で日本へと向かう。


スーツケースを引きずって帰ってくると、
「約束しただろ。俺はしぶといんだ!」
2週間ぶりのニューヨーク、
最初に笑顔で迎えてくれた隣人は彼だった。

通りに面した部屋に聞こえてくるバラバラに音をたてるショッピングカートの4輪。
ビール瓶がぶつかりあう音。
そんな音が聞こえてくるたびに心のある部分が青色から赤みを帯びてくる。
緑が深くなってきた最近では、
垣根の間からのぞきこむようにしてショッピングカートの所在を確かめて帰るのが日課となっていた。

夏になるとフロントヤードから肉を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。

"Hey, you wanna beer?"
誰もいないのにあたりを見回しながらささやくオジサン。
破格値で譲ってくれるビールの出所を聞くほどぼくも野暮じゃない。
ぼくの部屋で生産される大量の空き缶は毎週木曜日にオジサンの家に放り込む。
酔っ払った朝、10ドル分ほどの空き缶を見つけて引きずっていったこともあった。

"C'mon Baby! Come eat! Come eat!!!"
毎夜、8時頃、裏庭に面した窓から怒鳴り声が発せられると闇がうごめきだす。

10月の朝、庭の片隅に膝を立て70cmx30cm程の穴を鉄板で掘るオジサン。
土をかけ、四角い石を立てたあと長い間ひざまずいていた。
その日は一日中、猫語でしゃべるオジサンとガールフレンドの声。


オジサン。ぼく。あとひとり。
3人で半野生の猫くんたちの世話をしている。




ベッドマット、ソファー、棚、テレビ、冷蔵庫の扉、アリゾナ・アイスティー等身大看板……。
歩道に出しても誰も持っていかないほどくたびれたガラクタたち。
彼の引越しが決まったのはひと月前。
引越しというより退去。
先週木曜日にはブツブツといいながらも、
笑みまじりてガラクタをフロントヤードに戻す彼の姿。。
「あっちの都合で1週間だけ延びたんだ」
太陽の下、黒いレジ袋で巻いたハリケーンという安ビールを飲みながら。


「どう?猫たちは?ちゃんと食ってるかい?」
昨日、隣人から聴いた話では再度1週間延びた、と言うことだったのだが……。
「1週間延びたんだって。よかったね」
"I'm living on the street, man......"
つぶやく。
「ちょぅとうちに寄ってく?」
"Hey, I got to catch up that guy. See you later, my friend."
オジサンは止まった車から降りてきた少年を急ぎ足で追いかけはじめてしまった。


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隣の家のゲートは鎖と錠前で巻かれてしまった。
そこは出て行くためのものではなく、入ろうとする者を拒むことしかしない。


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by seikiny1 | 2010-05-09 08:27 | 日ごろのこと
「帰ってきたぞ~っ!」
この言葉に反応する人は、やはりあの方のファンなのでしょう。

帰ってきた。
日本で思い、NYでも感じる。
ぼくはやはり幸せです。


時差ボケのまま日常という生活に戻りました。

早起きをして家を出る。
駅近くでamNYという日刊フリーペーパーを手にする。
電車に乗り女性の体がでかいことに気づき、NYへ帰ってきたことを実感。
冬に短いスカートをひらつかせる人なんて一人もいない。
8時後前からの約30分は再びパブリック・スペースでボンヤリ。
"Oh, my god!"
遠くの声に顔を上げると、
顔見知りである清掃のおじさんが笑顔でホウキを振っていた。
不在、そして復帰。


2週間という時の量はそれほど大きくないのだろうか。
街の様子は空白をまったく感じさせない。
それでも気をつけて見ていると花壇の掘り返されたあと。
湿り気を含む生気あふれた土が陽を浴びている。
ハゲイトウの姿が消えていた。
そんな新鮮な穴ぼこを眺めながら、
「ハゲの伊藤さんはカワイソウだな」
そんなことを考えて通り過ぎる。


「ゆっくりと歩いていこう」
都会の生活。
イライラすることもあるだろう。
人生の道ではなく、NYの歩道をゆっくりと歩いていこう。

ゆっくりと歩けば不思議と心が落ちついてくる。
かつては、気づくとゆっくり歩いていることが多かったけれど、
最近では、いつの間にか早足になっている始末。
だから意識してゆっくりと歩く。
強制的に気持ちを矯正しなくちゃ。
近づいてくるバスに最敬礼を送るリムジンバスの社員のように。
彼らの背中を異国人はどんな思いで見つめるのだろう?





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by seikiny1 | 2010-03-09 09:11 | 日ごろのこと
長靴をはいたネコの瞬発力
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猫クンたちも喜んではいないでしょうが’駆けまわります。
こたつがないからかもしれない。



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かれこれ、見ているだけで12時間以上もの間降り続けています。
仕事場も午前中でクローズ。
非常階段に30cmほども降り積もった雪を乗り越えて、
3階にあるぼくの部屋まで上がってきてくれる野生の猫クンたち。

「大雪!」
と、誰もが大騒ぎをするのですが九州育ちであるせいか、
<雪が降る>時に心のどこかがワクワクしているのがわかります。
天災に等しい北国の人には申し訳ないのですが、
この感情は戦争のない国に生まれた若者が
異国の軍服にファッションとして憧れてしまうのに似ているのかもしれません。

「どうして迷彩服なの?」
映し出された画像につぶやいていました。
治安がよくないのはわかるけど、平和活動のために訪れた他国。
各国間に取り決めでもあるのか、
兵士達は<闘い>を一番想わせる服を着込んでいます。

ハイチに到着した自衛隊員達は初めての朝をラジオ体操で。

プレゼントの包みは目の前で破いてほしい。
すぐに返ってきたメールの返事はやはりうれしい。
ご馳走の前では、親の仇に出会ったようにガツガツ食べてほしい。

結果としては同じことなのに。
瞬発力のあるなしで受け手はまったく別の目となります。

「瓦礫の下から4週間ぶりに生還し」そんなニュースが届いた頃、
東の国から男たちはやって来てくれました。
リコールするのに二の足、三の足を踏んでしまったトヨタ。

どうせやるんだったら……。


午前中で引けた会社の後、
わけもなく。
これといって行くあてもなく。
ただ、ブラブラと街中を歩き続ける。
「痛い」と感じる吹雪の中で。
冬山に遭難しかける人の胸中を思いながら。

雪の中を歩くのが好き。
それは今でも変わらない。
少しだけ変わったのは、
1Q84 1月。
地元ではめったにお目にかかることのできない大雪の中、
アーケード街にある電気屋の前で立ち止まっていました。
テレビは炭鉱の火災事故を伝えています。
不思議なことに、故郷で炭鉱事故が起こるのは雪の日が多い。


テントのチャックを開けた瞬間、
眼前に広がる真っ白な原っぱ。
雪灯りを初めて体験し、
「美しい」と感動した夜。

いつまでも忘れることができない白い夜。
窓はなくってもいいのかもしれない。
そういえばNYで最初のアパートは地下室だった。


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by seikiny1 | 2010-02-11 11:39 | 日ごろのこと
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