ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
お願い
当サイト・メインコンテンツ内にある全ての著作権は筆者に帰属いたします。無断転載及び流用は固くお断りいたします(トラックバックに関しましてはこの限りではありません)。
以前の記事
カテゴリ
カテゴリ:旅のボヤキ( 12 )
ハーゲンダッツ
 実はまだダラスにいます。予定ではもうすでにテキサスを出ているはずなのに……。それでもなんとか明日にはヒューストンへ向かうことができそうです。もちろん「何も起こらなかったら」、という前提つきですが。

 昨日は金曜日。相方のドライバーは宗教上の理由で金曜日の日没から土曜日の日没まで働かない。と言うよりも戒律上それを禁じられているらしい。それはこの旅に出る前からわかっていたことだから一向に構わない。こちらはその《約》二十四時間だけが唯一ひとりになることができる。この時間なしで僕は生きていくことはできない。
 誰もがいろいろなものを背負って生きている。背負いたい人も、そうでない人も。それが宗教であれ、ひとりの時間であれ。なにがしかのものがある。

「何時までに(仕事を)終わればいい?」
 そんな問いへの答え方にもその人の人となり、性格があらわれてくるものらしい。彼の答えは、
「うーん、四時ごろかな」
「いや三時だね」
「ちょっと待って。二時半くらいのほうがいいかもしれない」
 一分弱の間に数字がだんだんと減っていく。もし僕(多くの日本人)が同じ問いを向けられたとしたら。この数字はきっと増えていくことのほうが多いだろう。ギリギリの少し向こうくらいまで。なんとか「なんとか」しようとする。
(正確な日没時間はわからない。彼らがなにを指して<日没>と言うのかも。ちなみにダラスでは午後八時三十分を過ぎてもまだ薄明るい)

「アッ、忘れてた。車のブレーキランプが切れてたんだ」
(この言葉、少なくともこの十日間で数十回は聞いている)
 そう言いながら次の現場へと向かうべく乗ったハイウェイの途中で彼はハンドルを切った。ダラスがどんどん後ろへ遠ざかっていく。時計の針はやっと二時を回ったところだった。
「ダイジョウブだよ。これから行く所のそばにも仕事になりそうな場所があるから」
 滑り込んだ所は野球場のような敷地におそらく数千台の車が整然と並べられたカー・ディーラーだった。ハイウェイを下りる前からSERVICE(修理)と書かれたブルーの大きな文字が目に入っていた。
「エーッと……。どこだったっけかなー」
 整然と並んだピカピカの車の間でまたナビゲーターに戻る僕。
 そこまで足を運んでやったことはといえば、ヒューズと電球の購入。交換ではない。
 ヒューズを入れてみる彼。
「悪いけどちょっとブレーキ踏んでくれないか?」
 ―――――
「おかしいなー、つかないぞ。ウン、きっと電球だな。ま、後から換えることにしよう」
 勢いよくドアを閉めると車はいきなりハイウェイに滑り込む。
 僕は知っている。彼が電球を一個しか手にしていなかったことを。
 彼は知っている。双方のブレーキランプがつかないことを。
 この旅の間にブレーキランプがともる日はやってくるのだろうか?

 気がついてみると車はモーテルのあるイグジットを降りていた。
「ちょっと取ってくるものがあるから」
 そう言い置いて彼は車を降りていく。数分後に戻ってくるといよいよ<仕事になりそうな>所へ。だが、走り出して五分も経たないうちに、
「こっから6マイル(約10キロ)あるんだよなー」、とひとり言。
「もう疲れちゃったよ、今日は。ヤメにしちゃっていいかな?」
 ちなみに僕たちは歩いているわけではなく、車に乗っている。まぁ、運転しているのは彼なのだが。もちろんそれが彼に与えられた仕事でもある。数瞬の間言いよどんでいると突然大きなUターンがはじまりだしていた。
 このハンドルさばきでダラスでの仕事は終わってしまった。

「あ、買い物するの忘れてた」
 モーテルへの途中でつぶやく彼。
「ま、シャワーでも浴びててくれよ」
 そう言い残して彼は消えていく。

 五時になりそうだった。
 彼はまだ帰ってこない。いったいあの<二時三十分>という時間はどこへ行ってしまったのだろう?

 こんな具合で僕の旅程はドンドン延びている。本当に終わりは来るのだろうか?そんなことまで不安になってきてしまう。

 昨日の朝のこと。車のドアに鍵を差し込みながら彼は言う、
「セイキを見習って俺もだいぶオーガナイズできるようになったよ。今朝なんか、ホラ。<たったの>一時間で準備ができただろう」
 僕にできることはと言えば、うなずくことくらいだった。
「あ、いけねー。忘れ物しちゃった」
 いつものごとく予定の時間はもうとっくに過ぎている。
 数分後、氷で満たされた1.5リットルほども入る大きなプラスチック・カップを手にニコニコ顔の彼が戻ってきた。それにコーラを入れておいしそうに飲む。彼はコーヒーを口にはしない。そのかわりと言ってはなんだが、毎朝ハーゲンダッツのアイスクリームをひとつ。
 たしかにダラスは暑いんだけどね……。

 旅が終わったとき、この二人はどうなっているのだろう?
 お互いが、お互いから何らかの影響を受けあっているのかも知れない。それでも僕にはコーラとアイスの朝食はできそうもない。そういえばもう十日以上米粒を口にしていない。今日はメキシカンフードでも食べに出よう。



○この記事を読まれて<なにか>を感じられた方。
ここを押していただけたらウレシイです。



○新しいブログ《ボーカンシャ》です。よかったらのぞいてみて下さい。
[PR]
by seikiny1 | 2006-05-14 05:32 | 旅のボヤキ
車はガソリンで走るんです
昨夕、陸路でシカゴからテキサスへ。今朝からはテキサスにいます。この旅はこれからも陸路での移動が続きます。
 ダラス、オ-スチン、サンアントニオ、ヒューストン、アルバカーキ、フェニックス、ラスベガス、サンジェゴ、そしてサンフランシスコへ。予定が伸びそうでニューヨークへの帰着は6月下旬ごろになりそうです。
 こういった状況下であるからといって旅行ブログにするわけでもなく、ただ僕がニューヨークから動いているというどれだけ。立っている、歩いている場所が変わるだけ。どちらかと言うと少しだけ遠出の散歩といった意識が強いです。それでもどうしても旅先で感じたことが中心になっていくことでしょう。そういったわけで当分の間『旅のボヤキ』といった感じの短文をお楽しみいただけたら、と思っています。
 ニューヨークでは拾えないものを拾うことができたら僕はそれでいい。

今 回の旅はドライバーとの二人三脚。ペースがまったく違い、チームワークをとることの大切さ、その難しさをしょっぱなから痛感しどうしです。間違いなく僕のほうが振りまわされているのだけれど。
 特に、一人であることが好きな僕にとって、二十四時間常に<誰か>がそばにいるというのはかなりしんどい。きつい。きびしい。こういった中でどれだけ自分を保っていけるのか?それもまたこの旅の試練のひとつかもしれません。とにかくひとりになれないので、このところそのストレス度がかなり高くなっているのが自分でもわかります。この先どうなることやら……。

 本当に「走る」という言葉がぴったりと来る仕事を十年以上ぶりにやっている。もちろんこういった動きは僕の本分ではない。それでも引き受けた以上は走りとおさなければならない。とりあえずこの二ヵ月間は「走る」ということで腹をくくった。
 それなのにパートナー。
 走りません。休みます。忘れ物します。落し物します。なにかをまとめるのが苦手です。落し物をよくします。迷います。あぁ、どうしよう……。
 それでもパートナー。とってもいい人なんです。なんとか帳尻をあわせよう。

 シカゴからテキサスへ。車は大きなシボレーのピックアップトラック。笑いたくなるようなはやさでガソリンが減っていきます。それにしても一時間毎にハイウェイを降りて給油するドライバー。ガソリンタンクの目盛りはまだ3/4のあたりをうろついているのに。最初の五時間はきっちり一時間。その後は二時間。あんなに忘れ物したり、落し物ばっかりしている彼なのにこういったところはなぜか几帳面。
 車への給油の頻度には結構人の性格が表れるのかもしれない。
「まーなんとかなるだろう」
「石橋はいつだってたたくもんだ」
 ここのところ運転こそしていないけれど僕はずっと<ギリギリ派>だった。E付近のオレンジラインと仲良しだった。針がそこを振り切っても「あと○マイルは走るな」と余裕を持ちながら走る。それでも一度だってガス欠での立ち往生はない。こういう経験が積み重なった結果として<ま-なんとかなるだろう>度がドンドン上がってしまったもかもしれない。そして……。 
 一方では時間毎に給油する男もいる。こんなタイプの人は決してホームレスになったりしないのだろう。「前に、前に」と手を打ちたとえ「亀!」となじられようとゆっくりと、しかも着実に進んでいく。そう、テキサスは決してどこへも行くことはない。
 ガソリンタンクの目盛り。それを右端を気にする人間と、左端。乱暴なわけ方をするとこの世にはこの二つのタイプの人間しかいないのかもしれない。その二つがなんとかギリギリのバランスを保っているのがこの星。そしてこのトラックにもそんな二人が並んで座っている。

 十四時間の予定だった。十六時間が経った今朝九時過ぎ。ダラスまであと180マイル。
「もうだめだ」
ドライバーは根を上げてしまった。州境を超えた最初のイグジットでハンドルを左に切る。仕方がないのでそこのモーテルにチエックイン。

 予定は遅れている。ボスはイライラしていることだろう。それでもしょうがない。泣いても笑っても彼(ドライバー)が首を縦に振らない限りトラックは進まない。
結果として昨日、今日と二日間が宙に浮いた。昨日のことはまたの機会にでも書こうと思う。
少しだけイライラしながら、あせりながら突然転がり込んできた休息日を楽しんでいる。モーテルでは一発でネットに接続することができた。さて、次はいつつながるだろう?
「まー、なんとかなるだろう」



○この記事を読まれて<なにか>を感じられた方。
ここを押していただけたらウレシイです。



○新しいブログ《ボーカンシャ》です。よかったらのぞいてみて下さい。
[PR]
by seikiny1 | 2006-05-09 12:55 | 旅のボヤキ
記事ランキング 画像一覧