ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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2010年 04月 29日 ( 1 )
異景
「自信がない」というよりも「自分がわからない」。
電車の中でそんな思いに取りつかれた。

いつもより1分早く家を出る。
いつもよりひとつ早い電車はこみあっていた。
それでもぼくの座る向かい側には、
径2mほどの空白がある。
柄物の化繊混じりのセーターを頭の上まで引き上げたホームレスが眠っている。
サンダルばきの白い靴下が少し汚れている。

(やっぱり寒いんだろうか……)

隣に腰を下ろした野球帽の男は、
ウールコートの袖口が厚手のセーターのせいでモコモコしている。
駅から地上へ上がる階段で慌ててマフラーを巻く女。
フードをかぶって歩く人がいる。

そんな目でストリートを歩いていたせいもあるだろう、
なんだか黒っぽく映る街。
いつもより厚着をしている人が多いように思われる。

「いつも」はいったいいつなんだ?
昨日?
この1週間?
1年前?
平均的?
それでも冬の日々よりはあたたかい。
冬の日はいつもではないようだ。
黒いカバンをたすきがけにした男はストライプのシャツ1枚だけ。
Quicksilverの緑色ロゴがどんどん小さくなっていく。


どうやら寒いらしい。
少しだけわかってきた。
いつもはシャツ1枚で朝のタバコを楽しんでいる男も、
今朝はナイロンのジャンパーを着込んでいる。

今日は寒いんだ。
自身がもててきた。
ベンチに座っているといつの間にか肩に力が入っていて、
手がかじかんで小さな字をうまく書けない。


今日はいつもより寒いらしい。

いつも?
いつもってなんだ?
少なくとも昨朝より気温が落ちていることは体に刻まれた。
周囲を見渡す必要はなくなった。

時計に目を落とすといつよりは10分早い。
立ち上がって仕事場へと向かう。
今日、新装開店をする寿司屋のウィンドウが変っていた。

粗い織りをしたきなりの木綿が窓いっぱいに張られている。
縦横に走る魚ヘンの漢字たちは、
マンハッタンの街並みをあらわしているのか。
紙芝居のように画像を取り替えていく、
かたわらに置かれたモニターとのコントラストは、
この店の味に不安を抱かせる。

2年前のいつもはうまかった。
最近のいつもはたいしたことなかった。
装いを新たにし新しいいつもがはじまるのだろうか。


いつもと違うことには昨朝から気づいていた。
2日連続はいつもへの助走ということなのか。
仕事場の近所。
新聞の街頭売りが立つようになった。
どこか怯えたような共通の表情を持つ3人が、
10mずつほど離れて今日の新聞を胸にかかげる。
「こんな立ち方では効率が悪いのでは?
通り過ぎながら心配になっていた。
この光景もいつの間にかいつもとなってしまうのか。


いつも。
実に不安定だけど確実に存在をする。
日本で触れた様々な異景。
2週間プラスではいつもとなることはなかった。
いつもにはどれがけの時間と回数が必要なんだろう。
ぼくのいつも。
少なくとも今現在はこの街、ニューヨークにある。


電光掲示板を見上げると42度。
5.5℃。



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by seikiny1 | 2010-04-29 10:43 | 日本とアメリカと
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