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by seikiny1
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2010年 04月 15日 ( 1 )
電車いっぱいのSさん


2日間お休みです。
次は4月17日(予定)。



「念のため……」
そんなときは、いらないものがほとんど。

「本を読む時間は飛行機の中くらいだったな」
「カメラの充電なんてしなかった」
……
日本へ帰ってからの生活パターンもわかってきたので、
回を重ねるごとに荷物は少なくなっていく。
迷ったら入れない。
今回はスーツケースに大きな空っぽの段ボールを入れて帰った。
すき間が開きすぎてしまい。
それでもNYへ帰る際には重量オーバー。
あわや、超過料金を取られそうになる。
旅人の太っ腹の重さ。


何度も失くしたり、壊れそうになったり。
スペアの眼鏡を買うことにした。

老眼鏡を手放すことができなくなって5年が経つ。

分厚い手帳
文庫本
ペン
携帯電話
タバコ
ライター
財布
老眼鏡

便利になった世の中で増えつづける荷物。
「念のため」は入っていない。
二つ折りの財布だけは定位置である左の尻ポケット。
去年より増えているのは携帯電話と、倍の厚さになった手帳。
ポケットの少なくなる春に備えて小さなバッグを買うことに。
念のため。
生成り帆布製の小さなショルダーバッグを無印良品で。
1980円也。


バッグの起源は袋。
ある程度のこだわりはあるが、
ぼくの場合は物が入ればこと足りる。
とはいっても、数万円のバッグを否定する気はさらさらない。


Sさんと会ったのは23年前だった。
シカゴへ引っ越した数日後だったはず。

Sさんは財布を持たない。
クレジットカード各種、免許証など数種類のIDカード、お札。
そんなものを輪ゴムでグルグル巻きにして束ねていた。
3cm程の厚さは会ったはず。

Sさんはカバンを持たない。
書類、バインダー、本、ペンなどをレジ袋に入れて会社へ来ていた。
袋はたまに替わるが、
そこにはいつもDominick’sというスーパーのロゴがあった。

Sさんは1970年代初頭にNYへやって来た。
時間の大部分は当時で止まっていたのかもしれない。
少しだけフレアのかかった綿ポリのズボン。
ベルトレスだった。
「どこで買ったんすか?」
ききたくなるようなシャツは、
高い襟台、大きく長い襟、不思議な小紋模様のプリントが全身を埋めるポリエステル製だった。

今だったら「ブルーズだな」なんて思えるが、
あの頃のぼくにそんな容量はない。
家へ帰るなり「すごか人のおらすバイ」
と、当時の妻に靴を脱ぎながら伝えた。
笑いをこらえながら。

レジ袋はアメリカでも問題視されている。
15年ほども会っていないSさん。
今ごろはエコバッグですか?
財布は相変わらず輪ゴムですか?


出だしはファッションだった。
エコであることはおしゃれだった。

電車内を見回すと多くの人がエコバッグを手にしている。
買い物用ではなく、通勤用として。
しかもほとんどは別段洒落たものではなく、
はっきりいってショボイもの。
99¢で売られているスーパーなどのものが多い。
そんな中でSさんを思い出したという次第。

ファッションという入り口から入ったが、
そこではじめて機能性に気づいたのだろう。
物を入れる。丈夫である。
ただそれだけの機能に特化したバッグ。
アメリカではToteと呼ばれる。
この名前がこれほどあふれかえるとは想像だにしなかった。
別格である、L.L. Beasの帆布製Toteを除いては。

今回の帰国にあたって母へのおみやげに選んだのもバッグ。
黒いナイロン地Tote風バッグ。
99¢じゃない。


今日は仕事を終えたその足で小さな旅に出る。
いつもとは違うバッグのために勝手がちがい、
「あんたチャック開いてるよ」
と見知らぬ人から教えてもらったり、
物のありかがわからずゴソゴソしたり。
身体がオートモードで動かない。
もちろん「念のため」は入っていない(と思う)。

「念のため」は不要。
しかし、今、
ぼくがあるのも内在する「念のため」のおかげといってもいい。
基本的なところで用心深いから。
雨の日、大雪の日、強風の日、やばそうな場所で……。
6年の間、そんな中をくぐりぬけることができたのも、
どこかにあった「念のため」のおかげでもある。

ただぼくの用心深さには適当なズボラさが同居をするのだけれど。
たまにやってしまうチョンボ。
「こいつは入れとかなきゃな」
旅先でふたを開けたら空っぽだったフェイスクリーム。
この適当はテキトーではなく。
この良い加減はイイカゲンではない。



血は争えない。

NYヘ発つ朝、
ぼくは母親を見送った。
友人達と小旅行へ出かけていく母。
肩ではおみやげの黒いカバンが揺れきれずにいる。
「『これも要るかなー』と思うて、
わかっちゃおるとばってんねー。
ついつい、あれもこれも詰め込んでいつもカバンはパンパンたい」
玄関までの数メートル。
苦笑する母の背中を送って歩く。
「いってらっしゃい。いってきます」
「いってきます。いってらっしゃい」





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by seikiny1 | 2010-04-15 05:03 | 日本とアメリカと
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