ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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2010年 04月 01日 ( 1 )
「フッ」という瞬間
時おり思い出す光景。

暗闇の中を動く小さな背中がみっつ。
小学生のぼく、年長の従兄弟がふたり。
ぼくたちは線路脇に設けられた鉄道保安用の鉄製通路を歩いている。
どこかに行っていたわけじゃない。
ただ歩いていただけ。


小さな頃、線路は遊び場だった。
他校区との間を走る10数本の線路。
横を流れる幅50cmほどの浅い川。
ザリガニの宝庫だった。
「ウナギを捕まえた人がいる」
などという伝説がまことしやかにささやかれていたりした。
そのくせ、当時の線路がどんなものであったのかまったく思い出すことができない。
いつまでも絶えない石を踏む音、
5時前5分のサイレンが鳴ったあとの夕闇、
だんだんと大きくなってくれ列車のライト、
蒸気機関車が吐き出すススの匂い、
まだポケットの中で熱を持つ、平たく薄くなってしまった鉄釘、
よみがえるのはそんなことばかり。



●2007年=50、 2008年=33、 2009年=44、2010年=0 
(成功率=40.8%)
●2009年=623 

上はNY市地下鉄の自殺者数。
下は日本での鉄道自殺者総数。


地下鉄が来るのを待ちながらホームの上から線路を覗き込むことがよくある。
日本でも、ニューヨークでも。

日本では文字に違うことなく、
どこへ行っても紙切れ1枚落ちていない。

ニューヨークでは、
コーラの空缶、ペットボトル、新聞紙、オレンジの皮、電池、ヘッドホン、携帯電話、チキンの骨、紙幣、帽子……
まるでドラッグ・ストアの棚のような品揃えだ。
重苦しく赤茶の中に沈みこんだ枕木、
水たまりの中を丸々と肥ったドブネズミが走る。
唯一の救いは線路の細い接触面が反射する光。


「こんなところでだけは死にたくないな」
そう思わせるのに充分な光景だ。
数ヶ月前の高円寺駅構内。
転落した女性を救助するために線路に飛び込んだ男性。
もし、NYのような線路だったら二の足を踏んでいたかもしれない。
(しかし、3年程前のNY。こちらも人命救助のために飛び込み、無事生還を果たした勇敢な人がいました)

いっそのこと、日本の線路も掃除なんかやめてしまえば、
ある程度の人命を救えるかもしれない。
とりあえずは。
たとえ、結果として汚すことになろうとも、
最期の場所くらい選びたいのが人情だ。


余談だけれど、
いくら安全になったとはいえ、犯罪と隣り合わせのアメリカ。
犯罪が消えてしまうことは、この国の自由を脅かす原因となる。
そんな意見を持つ人もいる。



別に死のうとは思わない。
自殺しなければならない理由もない。
それなのに。
「いけねえ、いけねえ……」
そんな浅い経験をなんどかしたことがある。

近づいてくるヘッドライト、こだまする轟音の前、
1秒の数100分の1程度だろう。
「フッ」と気持ちを遠くに持っていかれそうなことがある。
線路には、
大きくなってくるヘッドライトには、
あの風には、
何かふしぎな力があるのかもしれない?


結果として自殺と断じられた人たち。
何%の人が自殺する意志と理由を持っていたのだろう?
もしかすると、ぼくたちはこの「フッ」を吹っ切れた
ただそれだけなのかもしれない。
山のこちらと、あちら、
ただそれだけの違い。


飛びこまれてしまった運転士のほとんどは、
以後、精神的疾患に悩まされるという。





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by seikiny1 | 2010-04-01 10:41 | 日本とアメリカと
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