ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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春を待つ?
春を待ちながら、どこかでそれが来ることを怖れている。もう、すぐに来ることは、わかっているのに。

ここ数週間、朝起きたら、まずは大きく窓を開ける。外気の温度を体感するために。日陰が多い上、ビル風も吹くマンハッタンは、アパートのあるブルックリンより数度は低いはずだ。それでも、
「明日あたりかな……」
春の朝を迎えるのは。

冬の間も、朝の30分を外で過ごすのを日課としていた。僕にとって、なくてはならない時間でタバコとコーヒーが相方で。
ただ、場所だけは夏の間とは違う。寒い日々日には、ホテル前に屋根と二方の壁を持つ大きな車寄せが僕のアジトだった。巨大な屋根と壁がどれだけ寒さを和らげてくれたことか。
それでも百人百様で歩く人達を眺めるのは面白く、ビルの谷間とはいえ開放空間はやはり魅力的で快適だ。春の来るのが待ち遠しい。また広々とした世界へと戻ることができる。

習慣を変えるということは、それに付随していた諸々のことも同時に失ってしまうということだ。

いつも前屈姿勢で、重そうな身体を彼女なりの早足で運んでいく黒人の老婦人。僕の前を通る時には必ず”Good morning!” と笑顔を向けてくれる。
腰を下ろしながらタバコに火を点けると、たっぷり20分ほど携帯電話でおしゃべりに熱中するヒスパニックの女性。
New York Timesを広げ、ドーナツとコーヒーの朝食を終えると、マッチでゆっくりと火をつける。おいしそうに葉巻をくゆらす男性。
うつむき加減で腕を組み、いつもゆっくり、ゆっくりと北から東へと抜けていく東洋人女性。
回転ドアから吐き出されてきた客を見つけると、笛を鳴らしてタクシーに合図を送りながら早足で駆けよりドアを開けるホテルの従業員。
春は、そんな名前も知らない常連達との別れの季節でもある。もちろん消えてしまうのは僕だけではない。

夏の朝陽の下で彼らのことを一度くらいは思い出すだろうか?
常連の誰かが、僕の姿を思い浮かべることはあるのだろうか?
次の冬に何人と再会することができるだろう? 
僕が消えてしまっているかもしれない。

帰りの電車では、鼻に春を感じる。
「しまった!」、混みあった車両内には、ちょっと酸っぱい春の臭いが立ちこめている。それでも次の駅に着かぬうちに、もう既に順応していた。

明日は別れの日かもしれない.
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by seikiny1 | 2008-04-23 19:24 | 日ごろのこと
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