ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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太陽を盗んだ男<1>
「ゾクッ」とした。
 それは今年も家賃が値上げされたからではなく、その割りに全く暖房の効かない部屋に座っていたからでもない。身体の芯から「ゾクッ」とした。懐かしい感覚だった。

 アメリカに来た理由のひとつに「ストーンズのステージが観たい!」というものがあった。
 その頃、彼らが日本のステージを日本で見ることができるだなんてほとんどの人が考えなかっただろう。『太陽を盗んだ男』という映画の中で原爆を作ることに成功した主演の沢田研二は「ストーンズを日本に呼べ!」と要求していた。それほど不可能に近い状態だった。
 夢はかなえられた。
 ニューヨークへ来た次の年だったと思う。Shea Stadiumで彼らのステージを観る事ができた。二日前の夜、そのときと同じ電流が背中を走った。「二十年なんかたいした時間じゃないな」、次の瞬間にはそんなことを考えていた。身体は間違いなくその感覚をおぼえている。奇しくもオープニングはあの夜と同じ“Start Me Up!”
 皆それぞれに年を取ってはいたけど、タイトなロックンロールのリズムは変わることがない。

 そういったわけで生まれて初めてスーパーボールというものを少しだけ見た。ただただ、ハーフタイムに出演するストーンズを観るためだけに。人に聞いたところ何でもハーフタイムは<まともに>ゲームが進行すれば、キックオフの一時間後らしい。「まともに進むことはないよ」、と彼は付け加えた。それでも律儀に午後7時30分にテレビをつける僕。
 テレビでは男たちがぶつかり、そして走り回っている。試合の中断と共に画面左下にある残り時間はカウントをやめ、CFが入ったりスローでの再生画像が入ったり。そんな画面を見ながら僕は日本の国会で行われる牛歩戦術を見ているような気分になってしまった。遅々として進むことのないゲーム。しかし、人々はこの夜、このゲームに熱中する。アメリカで一番視聴率の高いテレビ放送だということだ。テレビのない飲食店は閑古鳥が鳴いてしまうので、わざわざこの夜だけテレビを入れるところもある。それほどこの国の人々はこのゲームに熱中する。アメリカで一番暑い夜。数ビリオン(いやトリリオンか?)の現金が飛び交うことだろう。
 僕には全くわからない。
 昨年のポール・マッカートニーにも食指は動かなかった。
 たぶんこれが僕にとって最初で最後のスーパーボールになるような気がする。

 スポーツを<観る>ということに熱くなれない。
 履歴書に<スポーツ観戦>と書く人がいるくらいだからこれは読書や映画などと同じで立派な文化で趣味なのだろうけれど。見ることはあるけれど観ることはない。「見たい」と思うことすらないのだから「観よう!」という気持ちが起こるはずがない。僕のヘソが曲がっているからそうなるのではなく、たとえまっすぐでもスポーツ観戦を楽しむなんてことは起こりそうもない。
 だからといって人が熱中する分はかまわない。実際僕の周りにも「アメリカにいる理由?それは年中スポーツが観られるからさ」という人が何人もいる。ただ僕にはそれがわからないだけ。ただ面白くないから観ないだけ。世の中には音楽が嫌いな人もいれば、全く本を読まない人だっている。それが僕にとってはスポーツを<観る>ということになっただけ。面白くないものはしょうがない。無理しちゃいけない。そういえば日本でもプロ野球なんて見たことがなかった。王や長嶋くらいは知っていたけれど。僕とスポーツ観戦の距離はそれくらいあるみたいだ。僕の血管の中にはとても濃い農耕民族の血が流れているに違いない。ゲームを見ても熱くなれない。
 ゲーム。
 僕にとってのそれは、ひとりで入ったバーのカウンターに座り手持ち無沙汰になった時に目を向けるものに過ぎない。そこで何かが動いているから。網膜にその像は映っていても頭は全く別のことを考えている。四角い箱の中で行われている意味のない劇と同じこと。


<次回につづきます>
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by seikiny1 | 2006-02-08 10:23 | 日ごろのこと
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