ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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囲い
 ロングアイランドの東のはずれにハンプトンと呼ばれるニューヨーク近郊では高級別荘地として知られる地域がある。数年前、知り合って間もない僕をそんな別荘に招いてくれた友達。その夏の数日を彼らの別荘で過ごした。
 別荘そのものはハンプトンの名から思い描いていたものよりはいくぶん小ぶりだったけれど、裏庭そして海へと続くプライベートビーチは幅百メートルほどあった。熱く焼けた砂の上を歩く友達夫婦の横顔には、照れくささとうれしさが混じりあったような笑みがこぼれていた。
 プラーベートビーチ。あたりまえの話だけれど、それは広大な海へと続く。誰のものでもない海。それは世界中につながっていく。そんな海を前にした彼らのビーチ。隣との囲いこそなかったけれど、そこは間違いなく彼らのものだった。
 それからの数日間僕は不思議な感覚にとらわれていた。

 動物園の中を歩きながら「一体どっちが枠に囲まれているのか」わからなくなってしまう時がある。わかっているのはそこに柵という名の枠がある。ただそれだけ。
 三辺しかない額縁から絵が落ちてしまうように、物理的に考えれば閉じて(囲って)いなければ枠と呼ぶことは出来ない。それは頭の中ではわかっている。それでも自分がその中にいるのか、それとも外にいるのかがわからなくなってしまう時がある。

 部屋の窓に収まる外の景色はその部屋の持ち主のものかもしれない。しかし一歩外に出てしまうとその景色は誰のものでもなくなってしまう。
 本、映画、ゲームの中で戦争遊びに嵩じることが出来るのも、それがその枠内に留まっていてくれる事を知っているから。戦場に自分から飛び込んでいこうという人はあまりいない。
 見知らぬ国へと旅に出る人も、帰る国があるからこそそれを旅と呼ぶことが出来る。

「パチパチ、カシャカシャ」が日本人だけの専売特許であったのは遠い昔。街の風景はすっかり変わってしまった。レストランはおろか撮影禁止の場所ですらフラッシュの光が目端に入ってくる。同時にモラルという名の人間だけが持つ暗黙裡の了解は崩壊しつつある。今はまだ入り口。
 人々はファインダー(モニター)を通して物事を見るようになってしまい「いつ切り取ろうか」、「どう切り取ろうか」と思いをめぐらす。あと少し時が経てば人々の網膜にはうっすらと四角い枠が焼き付いているのかもしれない。枠内のものを自分のものとして取り込み、その外にあるものはたとえ見えていても認識することが出来なくなる日が来てもなんの不思議もない。
 枠に収め自分のものにする。それによりなぜか安心してしまう。そして焦点はいつも枠の中心に。
 そういえば少し前に書店などでデジタル万引きというのがはやったという記事を読んだことがある。

 僕達は様々な欲を持っている。それを突き詰めていくと、「安心したい」という気持ちそして「支配(所有)したい」という気持ちに行き着くのかもしれない。そのどちらにも枠というものが関わっている。そしてその両方を併せ持つ最たるものを現在に探せばデジカメに行き着いてしまう。デジカメは人のそういった性向をつかんだからこそ爆発的な勢いで普及したのだろう。

 これからも形を変えながら無数の枠が生まれ、そして消えていくことだろう。さてそんな枠の中で、枠を使ってどう生きていこうか?

 ハンプトンのビーチでは友達と横長の網を使い小魚を囲い込んだ。素揚げにしたそれはまるでフレンチフライのようだった。あの枠に囲まれた魚たちは幸せだったのだろうか?
 僕も枠の中で生きている。安心ではあるけれど、そう居心地のいいものでもない。

 コラム。ずっと前から気になっていた言葉。またの名を囲み記事という。それは自分を囲んでいるのだろうか、それともその中に小魚でも囲い込んでいるのだろうか?





◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ボヤキTV』というのができました。

 ニューヨークの日系誌に三年ほど連載している僕のコラム『犬のボヤキ』とこのブログをあわせたようなコンセプトで作っていただいています。ニューヨークの街角でブツブツと言っている動く僕を見ることができます。
 正直言って「観て欲しい」と「観ない方がいいんじゃない」という気持ちが半々です。

 まぁ、これからもボヤいていきます。直らないでしょう。



『ボヤキTV』》←コチラです!
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by seikiny1 | 2005-12-29 11:45 | 思うこと
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