ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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<1>スト
 全くと言っていいほどテレビを見る習慣がない。そんな僕でもこの四年間で三回だけ継続的にテレビを見たことがある(「観た」わけじゃない)。
 一回目が2001年9月11日とその後。
 二回目が2003年の夏、ブラッアウトの翌日。
 三回目が今回のMTA(地下鉄、市バス)のストライキ。
 まぁ、一回目の頃はホームレスだったので「機会があれば」という但し書きつき。二回目の午後から夜にかけてはトランジスタラジオを聴いていた。電力の復旧後にテレビに釘付けになった次第。
 習慣のない僕をさえ引きつけてしまうほどテレビの力は大きい。と、いうよりも事件や事故が起こった時に「情報を知ろう」とする人の気持ちは大きい。そこに不安があるからだろう。手っ取り早い情報源は今でもテレビ。映像と音で(一方的に)訴える。
 さてこの三日間、テレビの視聴率はどれくらいだったのだろう?

 今回のテレビの報道を見ていると一日目はとりあえず大騒ぎ。インタビューに答える人達にもまだまだ余裕があったのか、それとも早期終結の期待があったからかその言葉も顔つきもきつくはない。
 そして二日目。人々の顔にも疲れ、怒りが目立ち始める。聞こえてくるのはストを実施中である組合員に対する罵詈雑言ばかり。たったの一日でこの変わりよう。
“selfish(わがまま)”
“greedy(欲張り)”
“back to work”
“jail(監獄)”
 こんな言葉が人々の、キャスターの口かで何回も繰り返される。これは市長が会見の中で口にした言葉でもあった。その姿が2001年9月11日直後の、2002年イラク戦争開始時の大統領のそれとダブったのは僕だけだろうか?

 二日目の映像、声から受けた印象がどうしても気になって三日目の今日はブルックリンブリッジを歩いて渡った。途中にあるレンタカー屋の駐車場は空っぽ。ゴミ箱の中に放り込まれていた地方紙の表紙には一面大の組合側リーダーの顔。その写真の上には格子が刷り込まれていて“JAIL HIM!”の文字が。もう彼(ら)はすっかり悪者扱いになってしまっている。テレビ中継でおなじみになってしまった橋を渡る。
 フードや帽子をかぶって白い息を吐きながら歩く人々。足元はほとんどの人がスニーカーだ。これはあくまでも僕が印象なのだけれど、テレビや新聞で伝えられるほどの殺気立った緊張感は感じられなかった。ある者は一人で、またある者は二、三人のグループでおしゃべりをしながら歩いている。疲れや引きつったというような表情ではなく、どちらかと言うと穏やかな表情を浮かべながら歩いている。歩調は僕よりも早い。それは僕の歩くのが遅いだけのこと。ただいつもと違うのは人の数。普段では絶対に見られないような数の人々が橋を歩いて渡っているというこの事実。
 帰りには大声で「ストライキ中止」を伝える人がいた。橋のブルックリン側の降り口では「ストライキ中止記念スペシャル」、の見出しのビラを近所のレストランが配っている。どうやらピザとパスタが無料でふるまわれるらしい。

 マンハッタンでもブルックリンでもこの三日間車クラクションが鳴り止むことはなかった。いつもどこからか怒鳴り声にも似たそれが聞こえてくる。この渋滞じゃしょうがない。誰もがイライラしている。
 昨夜、8時30分頃に片道200m程の道のりを歩いていつものデリへ。行きと帰りの計二回車に轢かれそうになった。どちらも信号が青の横断歩道内での出来事。二度とも空車のタクシーが猛スピードで突っ込んでくる。次の客を探しに駆けていったのだろう。この数日は毎日、元旦ほどの稼ぎ(ニューヨークのタクシーが一番稼げる日。ニューイヤーズイヴの直後)をあげているんだろう。怪我しなかっただけ儲けと思わなければ。
 今日街を歩いていた時に驚いたこと、それは白タクの多さ。中には手書きで料金や、行き先を書いたものを窓に張っている車もいる。あちらから、こちらから営業の声やクラクションが飛んでくる。そんな中にVirginiaのナンバープレートをつけた大きなワゴン車を見た時はさすがに笑ってしまった。ゴクロウサン。交通整理に忙しい警察官はいちいちそんなものを取り締まっている暇はなさそうだ。需要と供給のバランスということで黙認というところか。必要悪という言葉、そして日本の風俗店を思い出してしまった。
 大通りの角には段ボールの裏側に行き先を書いてヒッチハイクをしている男性が。

 僕が見た、体験したことは米俵の中のたった一粒の米に過ぎない。しかしそれは正真正銘の米であって、麦でもとうもろこしでもない。報道に出てくるものもまたたった数粒の米に過ぎない。玄米ではなく精米ということだって十分ありうる
 やっぱり二日目の報道がどうも腑に落ちない。たしかにスト二日目を迎え人々には疲れが目立ちはじめ、やり場のない怒りを感じ始めた人も多くいたはずだ。それは間違いのない事実。多分そこには大衆の「民意」というものがあるのかもしれない。それにしてもどうしてああいった同じ言葉が誰の口からも飛び出してきたのだろう?

 関東大震災の直後こんな風説が流れたという。
「朝鮮人が放火をしている」
 そして後悲惨な事件が起こった。後の調べでそういった(風説のような)事実はなかったことが判明したという。

 数時間の散歩を終えて帰宅。スト終結を伝えるニュースを見ている。少しずつクラクションが減っていくのを感じている。
 会見時の市長の顔は「人は戦争に勝った時にはこんな顔をするのかもしれない」、と思わせるものだった。第二次世界大戦終了時の各国の首脳の顔を想像してみる。

 テレビの画面を通して見られる家路を急ぐ人々は誰もが笑顔を交えて「うれしいよ」と言っている。業務に戻る組合員も質問のあと少しだけ間をおいて「うれしいよ」と口を動かす。ストそのものが中止になっただけでまだ何も解決されていない。同じ音の言葉にもかかわらず意味はちがう。

 市長は「減刑は選択肢にない」と言う。
 ユニオン(労組)側のリーダーの表情は数年前に捕らわれた時のフセイン元大統領のよう。

 会見の中で市長は、「これから地下鉄や市バスの職員に会ったら『さみしかったよ』
『おかえり』と声をかけてあげて下さい」と言う。

<(たぶん)次回につづく>





◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ボヤキTV』というのができました。

 ニューヨークの日系誌に三年ほど連載している僕のコラム『犬のボヤキ』とこのブログをあわせたようなコンセプトで作っていただいています。ニューヨークの街角でブツブツと言っている動く僕を見ることができます。
 正直言って「観て欲しい」と「観ない方がいいんじゃない」という気持ちが半々です。

 まぁ、これからもボヤいていきます。直らないでしょう。



『ボヤキTV』》←コチラです!
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by seikiny1 | 2005-12-23 15:58 | ニューヨーク
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