ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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 近所にかわいい女の子(女性)が住んでいる。秋頃まではたまに見かけていた。いつも「クラブ大好きです」、といった格好だった。最近あんまり見かけないな、と思っていたら今日少しだけ懐かしい後姿を見かけた。まだこの近所に住んでいるらしい。

 この世界はほんのひとにぎりの幻想と、ほとんどの現実で出来上がっている。生きていくということは言い換えれば、現実と対峙していくということだろう。
 僕の場合はほかの人よりもかなり幻想の占める部分が大きいように思う。感じる。それだけ<生きる>ということに真摯ではないのだろうか?いや、そうでもないはずだ。こんな僕でもひところと比べるとかなり現実の占める部分が大きくなっている。それはいいことなのだろうか?それとも悪いことなのだろうか?
 ある時期はほとんど幻想の中に生きていた。ただ息をして、食事をし、トイレへ行き、寝る。極端な言い方をしてしまえば、それだけがその当時の僕の現実という部分。最初は成り行きで、次第に意識的に現実との距離を置くようにしていたように思う。果たしてその当時、そんな生活を「充実したもの」とか「幸せだ」とか思っていたのだろうか、というとそれは怪しい。どこかで現実の部分を増やしたがっていた僕がそこには確実にいた。今、ふり返ってみても結論を出すことは出来ない。土台そんな判断は無理だ。誰にもできはしない。
 幻想と現実は背中合わせで、幸せと不幸せも同じ。そして、その瞬間、瞬間でどちら側に手を挙げるか、ということになると人それぞれの価値観は全く違っており、僕自身の中でもそれは常に揺れ動いている。ただひとつだけはっきりと言えることは、どんな場合においてもその幻想時代を悔いたことがないということ。ただそれだけ。
 さて、今の僕は何をしているのだろう?
 きっと自分の中で、一番心地よい幻想と現実の割り合いを色々と試しながら確かめようとしているのかもしれない。かわいい女の子の後姿がそんなことを語りかけてくれた。

 意味合いは少し変わってくるけれど、読み物の大きなジャンルわけとしてfictionそしてnon-fictionというのがある。字面を眺めてみると、どうひねくれた考え方をしてもまずfictionが生まれ、そしてそれに対を成すものとしてnon-fictionが生まれたことがわかる。一体fictionはいつの頃にその産声をあげたのだろう?
 人々がそれを求めていた。人々の生活にそれが必要とされていた。そんなところからfictionの物語は生まれたのだろう。
 人間は決して現実だけを見つめて生きていくことはできない。fictionはそう言った現実界で潤滑油でもありオアシスでもある。ほんの少しの幻想を得ることで、ソレが現実界で生きる力ともなっていく。誰もがfictionを、幻を必要としている。ただ、すべてがfiction(虚構)では全くおもしろくないし、それが機能することはないだろう。fictionの物語でもそこに現実というものが、みながその存在を知っているものがあるからこそ成立することができるし拍手をもって迎えられる。そのすべてがfictionであればその成立すら疑問だ。誰も求めない。
 そのさじ加減が実に難しい。いっそのこと料理本のように「大さじ三杯」などと書いてあるものがあれば、とさえ思う時もある。まぁ、それでは生きていくことがおもしろくなくなってしまうのだけれど。すべてのことは試行錯誤をするからこそ、その味わいも、面白味も増していくのだから。

 夏の頃とはうって変わり長いダウンコートと毛糸の帽子で身を包み、氷点下の街を女の子は歩いていた。その手にはスーパーのビニール袋、少し背を丸めて白い息を吐いている。しばらく行くと彼女はコインランドリーへと入っていった。
 彼女の中に現実を見たような気がして、僕はなぜだかホッとする。

 誰もが幻想だけではなく現実も持っている。
 誰もが現実だけではなく幻想も持っている。
 車輪の大きさこそ違うけれど、それは人間の両輪。





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『ボヤキTV』というのができました。
ニューヨークの日系誌に三年ほど連載している僕のコラムとこのブログをあわせたようなコンセプトで作っていただいています。ニューヨークの街角で僕がブツブツ言っている動画を見ることができます。
正直言って「観て欲しい」と「観ない方がいいんじゃない」という気持ちが半々です。

まぁ、これからもボヤいていきます。

『ボヤキTV』》←コチラです!
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by seikiny1 | 2005-12-14 16:27 | 思うこと
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