ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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忘れ<もの>
 よく忘れ物をしていた。
 家に、学校に、友達の家に、遊び場に、バスの中に。
 バスの営業所には忘れ物を受け取りに何度も足を運んだ。そのうちに係りのおじさんと顔見知りになった。おじさんの後ろの棚には、傘、かばん、本、腕時計、上着……、ひとつひとつタグをつけられた様々な物が入っていた。

 学生のある時期を熊本市で過ごした。そこには国鉄(現JR)が運営していた<忘れ物払い下げ所>があった。保留期限が過ぎて受け取り手のない物を販売する場所。中学生頃から古着の魅力に取り憑かれていた僕は足繁くそこへ通っていた。色々なものを買った。
 今思えば、そこはアメリカのスリフトストアとまったく同じであった。品揃え、そして立ち込めるにおい。ありとあらゆる中古品が所狭しと並べられ、積まれていた。中古品のデパートという言葉がピッタリとくる空間。そこには、飼い主を求める仔犬たちが並ぶペットショップのような空気が立ち込めていた。スリフトストアとの最初の出会い。
 そこで買った一九七六年製、アメリカ建国二百周年を祝うZippoのライターが大のお気に入りだった。そして、手に入れた数年後、ある飲み屋に忘れてしまった。そいつは行方を断ってしまった。今頃、一体誰の手に抱かれているのだろう?大切にされているといいな。

<忘れられてしまう物>という宿命を背負った物もあるのかもしれない。
 人の手から人の手へと転がり続ける人生(物生?)。あちこちで人に思い出を与えながら転がり続ける。
 忘れてしまった物達のその後が幸福である事を願い、そして忘れられた物達を大切にしながら生きていきたい。それは<忘れた>だけで終わってしまうものではないと思う。物は姿を消しても、それにまつわる<もの>は決して忘れられない事を願って。

 物、それはその存在だけではなく、時を経るに従い周りの物や、物でない<もの>さえ切り取って、巻き込んで、重ね着を続けていく。最初の物が消えてしまっても周りの<もの>が消える事はない。何かを見る時に、その物だけを見るか、それともその周りの<もの>まで見るかの違いで様々な事が変わってくる。
 物だけではなく、そのまわりの<もの>も。そしてその<もの>がまた見せてくれる<もの>。終わりなき旅。
 さて、遠くの方に見えるあれはなんだろう?

 いい思い出、いやな思い出。それらは物とは違って忘れる事は出来ない。忘れてはならない。捨ててしまってはいけない。一緒に歩いていかなくちゃいけない。身軽が身上だけれども、そうとばかりは言っていられない。過去と向き合う事もまた大切ではある。

 忘れ物をしながら人は歩いていく。そしてたまには何かを拾いながら。それは誰かの忘れ物。
 忘れた<もの>を、そしてその頃を思い出し、先を見つめる。

 バス営業所のおじさんの後ろの棚に入っていたのは、物だけではなく<もの>もはいっていたんだろう。
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by seikiny1 | 2005-10-23 06:45 | 思うこと
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