ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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お月様
 蚊やり線香をつけるのを忘れた。かゆさで目が覚め、灯りをつけずにトイレへ行き腰を下ろす。窓から見上げた空が少し薄明るくなっていた。
 空には月が出ていた。
 窓という名の穴だけがある壁に囲まれていると、月のことを忘れてしまう事がある。壁という名の壁だけではなく、周りには様々な形をした、形を持たない壁があふれている。見上げればいつもそこにお月様がいた、三年ちょっと前のことを思い出す。
 なんだか久しぶりに再会した家族のようにお月様は笑っていた。

 翌日(昨日)、インターネットを見ていたら十五夜ということだった。
「よし、今夜も見てやろう」、と思って出かけた。しかし、Little Itallyで催されている恒例のフェスティバルで雑踏にもまれているうちに、そんな事は忘れてしまっていた。露天のテントで夜空はますます狭くなり、そこから出される明かりでストリートだけが浮かび上がる。
 お祭りは大好きだけれど、この人ごみは疲れる。歩くに歩けない状態がいつまでも続く。年々人の密度の高い場所に身を置くのがしんどくなってきている。かと言って、わがままな寂しがり屋だから人がいないのはいやだ。
 フェスティバルを出る頃には疲れが不機嫌に変わり始めていた。

 薄暗く人もまばらなチャイナタウンでやっと一息つくことが出来た。何の気なしに地下鉄駅の階段を下りる前に空を見上げていた。満月のお月様が笑っていた。

♪月が出た出た、月が出た……♪
 生まれ故郷は炭坑節で有名な三池炭鉱のあった町。今でも月を見ると、そのメロディーが頭の中を流れ出す。
 アフリカでも、イラクでも、そしてニューオリンズでも。昔の人も、今の人も。善人も、悪人も、たったひとつの月を眺めている。誰もが同じ月を見ることが出来る。みなが共有する月を眺めながら、様々な人が、様々なことを考えている。お月様はどんな人間をも拒絶する事はない。

 月明かりを感じる事が以前より少なくなったように思う。見上げる回数だって確実に減っている。
 お月様は変わらないのに、僕は常に変わり続けている。そんな変化も、お月様から見たら《へ》ほどもないだろう。

 地下鉄を降り、地上へと出る。
 ビルの谷間の小さな空でお月様が笑っていた。昔と変わらぬ姿で、ウサギが餅をついていた。
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by seikiny1 | 2005-09-20 09:08 | 日ごろのこと
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