ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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「紙がない!」
 と言ってもトイレでの話じゃない。電車を降りて、公園のチェアでタバコを喫おうとしたときの事。
 あぁ、もう約束の時間だ……。
 ニューヨークのタバコは気が遠くなるほど高い。普通の物だと、一箱七ドルはする。完全にぜいたく品。貧乏な僕はここ数年、手巻きタバコを喫っている。これだと税金の関係で一ドル五十セント。二十五本は巻ける。必要なのは紙と葉。
 出かける時にバタバタしたせいか、紙を持って出るのを忘れてしまった。タバコを取り出して火がないのも辛いが、紙がないのもまた辛い。子供の頃、プラモデルの部品が足りなくて泣きそうになった事を思い出した。ないものがまた欲しくなる。これが人情。
 ぐっとこらえて人と会うために約束の場所へ。

 約二時間後、僕の足はミッドタウンを西へと進んでいた。「西へ行けば必ずあるはず」。最近ミッドタウンからは足が遠のいているので、今ひとつ自信はなかったけれど頭のどこかで確信に近いものもあった。紙そのものはどこのタバコ屋出でも手に入るのだけれど、紙だけで一ドルは確実にする。それならばいつものタバコを買えば紙がついてくるので、ということで安タバコを探して西へと向かった。
 六番街、「ない」
 ブロードウェイ、「ない」
 七番街、「まだない」
 八番街、「やっとあった」
 道端に腰を下ろして一服。

 実に不思議な話だけれど、僕が来た当初のニューヨークの匂いが残る場所と、この安タバコが売られているエリアが見事にダブっている。島の中心部でそれを見つけるのは困難だ。どんどん端っこに追いやられてしまっている。あのタバコがある場所には、あのニューヨークが残っている。そこに住み暮らす人々の表情、喧騒、雑然とした中に変な安堵をおぼえる。
 もっと古いニューヨークはきっと川を、海を、そして橋を越えてどこかへ行かなければ見つからないのかもしれない。きっと多くの人が、それぞれの心の中のニューヨークを探しているのだろう。その人たちは一体今頃どこを歩いているんだろう?
 ナポリで、ベルリンであの頃のニューヨークの匂いを嗅いだ。間違いなくあの匂いだ。僕のニューヨークはどうやらあのあたりに行ってしまったらしい。生まれたらしい。
 地球のスペースは限られている。そして地球は丸い。あのニューヨークもいつの日かきっとここに帰ってくるだろう。それまでは小さなニューヨークで遊んでおこう。

 たった一本のたばこ。
 しかし、その向こうには地図がある。みんなは何を通して自分の地図を眺めているのだろう?
 僕のニューヨーク。それはバスから降り立った時のあの匂い、そしてそれからの原体験なのだろう。さぁ、地図の点を一つでも多くするためにまた歩こう。

 噴水からはまだ水が出ている。まだ日陰を選びながらで歩いている。これがもう少し経つと日なたを選ぶようになる。その境目はどこなんだろう?
 日陰から日向になるように少しずつだけれど、自然に変わる。僕自身も。
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by seikiny1 | 2005-09-14 16:52
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