ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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ポスター ~フラッシュポイント~
 歩いている時に突然、ローリングストーンズのアルバム:フラッシュポイントの白いポスターが頭の中にひるがえった。こんな具合に彼らの事を思い出すのは一体何年ぶりのことだろう?

 今でもそのなごりはあるけれど、十数年前のニューヨークにはやたらあちこちに様々なポスターの壁が林立していた。しかも小さなものではなく、1m×50cm程のものが。飲み屋の開店広告、イベントの告知、コンサート情報、ポルノショップの広告……。その内容もこの街同様に混沌としていた。空きビルを囲む板塀はそれこそ絶好の掲示板で、その上に何重にも、何重にもポスターが貼り重ねられていた。年季の入ったものは風雨にさらされ全てが一枚板のようになってしまっているものが多く、中には端の方が反り返り、その厚さが5cmを越えている物も決して珍しくはなかった。今では空きビル自体がほとんどなくなってしまっており、小さなポスター達は居心地悪そうに電柱の間に合わせのはらまきのようにになってしまっているのが関の山だ。

 「あーでもない、こーでもない」、とくだらないことを考えながら今日は一日中家の中に居たのだけれど、日も傾き、ビールの時間に体が反応してきているのに在庫がない事に気付いて重たい足を引きずりながらてデリへ。
 そしてフラッシュポイント。
 それはいきなりやって来る。用意ができていなくてもやって来る。出かけて、帰るまでの道のりは五分にも満たないのだけれど、見る物の全てがフラッシュポイント。白地に炎が揺らいでいる。その内容はともかくとしても、色々なアイデアが浮かんでくる。そう、フラッシュポイントは、そこの角の向こうにあるのかもしれない。いつもいきなりやって来る。いつあいつが来るのかは予想のしようも、計画の立てようもない。
 さて、フラッシュポイントは来た。不発にさせないために。
 フラッシュポイントが来ても、それが爆発させるものがなければ不発に終わってしまう。不発弾は数十年後の工事現場の地中から発見され、恐る、恐る引き上げられるだけ。そして「中身が空っぽだった」、という事ほど間抜けな事はない。いや、発見され、引き上げられるだけでもましか。
 そう、フラッシュポイントがやって来た時に爆発ができるように。
 しかし皮肉な事に、当たり前の事ではあるのだけれど、それは「用意しておこう」、と思っても出来るものではないようだ。少しずつ自分の中に放り込み化学反応を起こさせながら備えておかなくてはならない厄介なもの。あるものは一生爆発する事はないかもしれない。ただ、そいつがいつやってきても良い様に、とりあえず無差別掃除機となってなんでも吸い込んでやろう。

 その白を基調としたフラッシュポイントのポスターは5m四方ほどもある壁に数十重に張り込まれたポスター達の上にたった一枚貼られていた。
 ハッ、とさせられるような古い光景。
 しばらくの間、その上はおろか、まわりにも新しいポスターが貼られる事はなかった。
 そう、僕がアメリカに来たひとつの理由は、当時、日本では公演が不可能と言われていたローリングストーンズのコンサートを観るためだった。渡米の数年後にそれは実現したのだけれど、その翌年に彼らは日本へと行った。まぁ、そんなもんだろう。
 “You can’t always get what you want.”
 この言葉だけはいつまでも真実であって欲しい。

 最近で一番心に残っているポスターは、ボヴ・ディランのマディソンスクェア・ガーデンでのコンサートの告知。その当時の僕の状況では行けるわけもなかったのだけれど、なぜかそのポスターを目にするたびに心が騒ぎ嬉しかった。
 そのコンサート予定日の前日、にワールド・トレード・センターが倒壊した。

 なんでも吸い取っておこう。
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by seikiny1 | 2005-08-11 15:32 | 思うこと
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