ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
お願い
当サイト・メインコンテンツ内にある全ての著作権は筆者に帰属いたします。無断転載及び流用は固くお断りいたします(トラックバックに関しましてはこの限りではありません)。
以前の記事
カテゴリ
Walking Distance?
 一体どれくらいまでの距離のことを“Walking Distance”と呼ぶのだろう?重いバックパックを背負いながら、駅を背にいつもそんな事を考えていた。

 重い荷物を背負って歩くのはしんどい。荷物が増えれば重くなるのはあたりまえの話。頭の中でこのふたつの真理はわかっている。それでもゆっくりとしたスピードで僕のバックパックはふくらんでいく。
 土地勘があり、具体的な地図が頭の中に出来上がっている場合は、目的地までの自分を引き算しながら歩けるのでまだ精神的には楽なのだけれど、真っ白な地図の場合、それは(はなはだ低レベルで面目ないけれど)自分との闘いと言えない事もない。
「本当にこの道でいいのか?」
 たった数分の道のりで何度もこの疑惑が頭の片隅をかすめていく。赤信号で立ち止まった交差点では、何人もの自分が格闘を繰り広げている。

 トランジスタラジオ、ウォークマン、コンピューター、車、携帯……。今のテーマで探すならドラマ水戸黄門の助さん、角さん、いや、うっかり八兵衛でさえ実に少量の荷物で旅をしている。そんな道中から生まれてきたものが、おにぎりであり、矢立であり、印籠であり、煙草入れだったのだろう。そうそう、俳句にしたって、その生い立ちがどういういきさつであったかは別に置いておくとしても、定型詩のミニマル化の産物と言えないこともない。
 どうやら「日本人は、小さくまとめる才に長けている」、というのが一般論のようだ。
ただ、自分を見るたびにその論に首をかしげずにはおれない。ただ、救われるのは、「小さくしよう」とは思わないが、ここ数年は「増やさないようにしよう」、と時たま考える事があるくらいだ。
 それでも荷物は増えていく。
 水戸黄門の冒頭と、終わりに出てくる彼らの軽快な旅装が何度頭をよぎった事か。

 小さくするためには?
 これだけは確実にミニマルかが進んでいる僕の小さな脳ミソで考えてみると、取り合えずふたつの方法が浮かんできた。
 凝縮すること、そして削り取ること。
 目的を見据え、大鍋にあらゆる物をたたき込み、コトコトと弱火で数時間、数日間、時として数年間煮込み、アクをすくいながら不必要な成分をトバしてしまう。そんな行為のどの面を削り取って見てみても自分にはまったく縁のない話としか映らない。こと、そこに<なんらかの意思を持ちながら>などという注意書きが加わってしまうと、まさに南極と北極の感がある。こういう状態を対極と呼ぶのだろうか?
 どちらかといえば、無駄なもの<その他>に大小のナタを振るいながら削り取っていく。こちらの方が、まだまだ僕には近いような気もするのだけれどそうでもない。大切なものにさえ涙をこらえ、目をつぶりながらもナタを振るう勇気を持ち合わせていない事は僕が一番知っている。第一、目をつぶってナタを振れば自分の足を切り落としてしまうのが関の山だ。少しずつ削り取って何かを残すよりも、いっそ不可抗力でゼロになったほうがどれだけでも楽だ。さっぱりと、捨て去るのではなく、あきらめがつく。

 幸いにビールの栓くらいは、栓抜きがなくても抜く事は出来る。しかし、ワインを目の前にして飲めない悔しさからコークスクリューを買ってしまう。表面の硬いパンを切るためにはよく切れるナイフが必要だ。やっぱり、たまにはゾーリでなごみたいので持っていってしまう。「読み終わったら捨てよう」、と思って持ってきた本を捨てられない。ホテルのチェックアウト前に洗面所で見かけた、小さな未使用の石鹸を置いていってしまうほどの度胸も持ち合わせていない……。
 バックパックはふくらんでいく。そして僕はそれを背負って歩いていくしかない。ツライのはわかっている。まぁ、これもひとつの生き方なのだろう。

 無駄に見えるような物や人。ダラダラと、流れているのかどうかすらわからない時空間。それらは僕とは切っても切れないところにいつもいるようだ。そして、そんなものに包まれている事が僕には快適でもある。所詮、「小粒だけどピリリ」、というものとは縁がないようだ。

 説明書きを読まずに、カルピスの原液を飲んだ人はまずいと思うことだろう。薄めて飲むように作られているから。
 俳句を<見た>瞬間にピンッとくる人は、豊かな感受性に恵まれ、それまでの様々な経験を昇華することができた人なのだろう。

 美味いビールは、栓を抜き、のどを通った次の瞬間に幸せが広がる。
 ワインを目の前にしてコルクを抜けない時の辛さよ……。
 荷物が増え続け、それと共に少しだけ幸せが増えたらそれでいい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
やっと帰ってきました。
留守中、訪れてくださった皆さん、メッセージを残していってくださった皆さん。どうもありがとうございました。
今日からまた、ボチボチ更新をしていきます。
[PR]
by seikiny1 | 2005-08-06 03:12 | 思うこと
<< 家康さん タビ >>
記事ランキング 画像一覧