ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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SHAVEのSLAVE
 よく前を通るガラス張りの小さな店がある。先日信号待ちをしながら何気なくその店を眺めていた。オープン直後の午前中、三人の店員と思しき人達がデスクを囲んで談笑中。朝ののどかな風景を感じながらガラスに目を泳がせて見るとそこにはポスターが一枚。いつからそこに張ってあるのだろう?今まで気付いた、意識したことはなかった。
 「!!!、???」
 それは一瞬であったけれどすごい勢いで僕を襲ってきた。<SLAVE>の五文字。混乱しながらもよくよく見直してみると書かれている文字はSHAVEだった。その上にはT字型剃刀の写真。正体がわかっても僕は<SLAVE>という言葉を引きずり歩き続けた。
 僕の中ではSHAVEよりSLAVEの方が重きをなしているのかもしれない。
 常に何かの奴隷であり続ける自分がいる。たとえば「毎朝ひげを剃らなければ<ならない>」。そんな生活をしている。ホームレスの頃はイヤになったら、自分で不快を感じたら剃るだけだった。果たして個人的にはどちらが幸福なのだろう?はかりになんかかける事は出来ない。失ったものもあれば得たものもある。比較の基準がまったく異質なものである。それでも人は比べずにいることが出来ない。まったく同じ言葉<幸福>で表わされるもの。それでもひとつひとつがまったく違う要素から成り立っている。共通しているのは常に何かの奴隷として生き続けるということ。しかしその奴隷は多くの場合自分の中にある。奴隷である事に引きずられている。SHAVEのSLAVEに自分からなっているのかもしれない。

 奴隷。それは心の持ちようで変わってくるはずだ。朝のひげそりを心地よく感じる自分を持つことが出来れば、それは義務から楽しみへと変わる。SHAVEのSLAVEから解放される。
 このお店は男のこだわりグッズのお店。ヒゲソリ用品の専門店。ただの道具へのこだわりだけではなく、そういった<精神面でのひげそりとの接し方を変える>というところにもこのお店のコンセプトはあるのかもしれない。たしかにその一枚のポスターは物事から解放される方法を僕に暗示してくれた。

 楽しみながら生きていく。嫌なものでもいいところを見つける。好奇心を持つ。嫌なやつの(自分では否定している)長所に目をあててみる。そんな小さな解放の積み重ねによって僕らは幸福になれるはずだ。
 まず手はじめに半年ほど使っている刃を交換してみよう。一年に数回しかそれを行わないほど僕はズボラ。交換した直後の肌の上をすべるような感覚は好きだ。変えればそれを味わえる事はわかっている。しかしその幸福は長続きしない。<滑らない>と感じるのは何日目からなのだろう?それはある日急に滑らなくなるのではなく、緩やかな曲線を描いて滑らなくなってしまうはずだ。しかしひげそりが毎日の点点の行為である以上、その日は突然やってくる。自分の感覚や、その時の気分もそれに影を落とす。そしてその曲線は段々とゆるやかな勾配になりそれでもいつまでも剃れ続けていてくれる。刃を交換した直後に大きな幸福感を味わうためだけに僕は刃を交換しないのかもしれない。そこにはいつの日か訪れる幸福の保証があるから。いや、その幸福はすぐに逃げ出してしまうことを知っているからなのかもしれない。幸福を失うことを怖れているからなのかもしれない。そして、ガサガサと引っ掛かり気味に肌の上のデコボコ道を進んでいるそれも「ひげを剃っている」という実感があり決して嫌いではない。
 たった一本のひげそりでこれだけ考えることの許された僕は幸福なのだろう。ありがとう。
 そう、物事は見方次第でどのようにもなる。誰だって幸福になる事が出来る。
 生活の奴隷にはならない。
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by seikiny1 | 2005-04-19 14:02
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