ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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白色の街
 本当に白いイヤフォンをよく見かけるようになったものだ。別に欲しいわけではないけれど気になる。それだけi-podが売れているということ、そして白のヘッドセットが珍しく、目につくということだろう。この色にしたのは僕達が考える以上に、時代を読んだ、時代を変える大きな決断だったのかもしれない。

 長い間オーディオ機器といえば<重厚長大>が良しとされてきた。やはりそこには音が安定するという理由があるのだろう。そして色と言えば黒とシルバーが基本であり、それ以外の色をあまり見かけることはなかった。色に関しても重厚なイメージを大切にしてきた結果だろう。そして白までの過渡期にはウォークマンに代表されるような俗に言うパーソナル・オーディオそして携帯電話の普及で様々な色が出た。しかし僕の知る限りでは白は珍しい。しかも常に外部に出ている物、イヤフォン。それらはついこの間まではイヤフォンとは呼ばれずヘッドフォン、ヘッドセットだった、色は黒。
 白色。それには軽快な、清潔なイメージが宿る。医者はや理師は白衣を着る。何らかの安心感を与える作用もあるのかもしれない。しかしそれは使いようによっては軽薄、華奢にもなり、ことイヤフォンに関しては深夜にテレビを観ていた父親の背中とダブる。数十年前のパーソナルな音の出力機器はモノラルで安っぽいつくりのイヤフォン。色々なコードの長さの物が売られていた。ペラペラの膜が振動しているような音がまたその時代にあっていた。今にもコードが「プチッ」と切れたり、「バキッ」という音と共に膜が破れそうなイメージが伴う。
 i-podは《白》という結論を出した。

 その色が珍しいだけに人目を引く。イヤフォンという古典的な名称。そういったものがまたそれを持つ者の心をくすぐるのかもしれない。革新的な差別化戦略とも言える。ターゲットはコンピューターを持つ人がほとんどだろう。時代はもうそこまで来てしまっている。「持っていて当然」という強気の戦略。これはコンピューター需要の掘り起しにもつながる。
 イヤフォンの先にはi-pod。その先にはコンピューター。そのまた先にはそういった生活レベルにある人。そんなことが連なっていく。

 こういうものを持つ人が爆発的に増えるということは、今、マンハッタンは景気がいいのだろうか?そんな世界とは全く無縁な僕にはわからない。そしてここ数年はビルの建設ラッシュでもある。それらのデザインに共通しているのは、ガラスやステンレスの多用。この街のあちこちに真新しく光り輝くビルが誕生している。それらが新しい街の風景の一部となり、不器用にこの街に溶け込もうとしている。
 これらのビル、白いイヤフォンと似たようなイメージを受ける。その押し出し方、コードの先にあるであろう物。新しく、軽快・清潔感がある。都会に住む者の心をやわらげ、少しだけ自意識を刺激してくれる。本当に持っているのかどうかさえわからないステイタスの中を漂わせてくれる。いい意味での誤解をさせてくれると言ってもいいのかもしれない。
 だが、白いイヤフォンは取り替えることが出来る。ビルは余程こまめにメインテナンスを行わなければ、時と共にその輝きは鈍くなってしまう。その求められる耐用年数はi-podとは比較することすら出来ないほどに長い。百年後に今のフラットアイアンビルに見られる、まるで使い込まれたあめ色のかばんのような光沢を放つことが出来るのだろうか?<味>が出ることまで計算して設計されているのだろうか?
 ただ、これは今現在の僕の価値観。百年の歳月を経ればその<味>といったものも変わっているのかもしれない。黒いヘッドフォンが白いイヤフォンに変わったように。今、都会を染めつつある白色と無色。それはいつの日か田舎の風景にさえ何の違和感もなく溶け込んでいるかもしれない。その時に都会の色は?

 オーディオ機器の定義も変わり、キャディラックもリンカーンも小さくなった。この国も小さくまとまる道を歩んでいるのかもしれない。国策と共振していると言えないこともない。重厚長大、軽薄短小。時代と共に価値観は変わる。

 どうやら白いイヤフォンが気になるのは僕だけではなさそうだ。i-podを狙った強盗が急激に増えているらしい。彼らは白いイヤフォンの先に何を見ているのか?
 昔、いつも真っ白な靴下をはいているホームレスがいた。
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by seikiny1 | 2005-04-15 13:39 | ニューヨーク
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