ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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Thrill is Gone?
 窓を開けている。今は午前零時前。
 ビルディングの下からはもうかれこれ三十分ほど話し込んでいる女の子の声が聞こえてくる。行きかう車の音、パトカーのサイレンの隙間からB.B. KingのThrill is Goneが流れてくる。今日、この時間に窓を開けている人は一体何人くらいいるのだろう?
 春が来た。今年一番の陽気。日中は多分二十℃を超えていたと思う。街行く人々の口元も心なしかほころんで見える。一番好きな季節。故郷のの花見の名所の花は咲き始めただろうか?
 昨年帰国したおりに、子供の頃よく遊んでいた公園へ行った。公園といっても、小さな山ひとつを公園化したもので動物園もあれば、桜の木が延々と広がる大きな広場まである。まぁ、山のあるセントラル・パークといったところだろうか。
 大企業の撤退、過疎化、それに伴う市の財政難で公園は荒れていた。山の中腹から上はたった十数年の間に半分野生に帰ろうとしていた。それでも、子供の頃の記憶を頼りに歩き回ってみた。草が生い茂る中に道を見つけることが出来た。

 ブロードウェイ。
 マンハッタンで一番古い大通りだという。一番長い通りでもある。まだオランダの植民地であった頃に出来た通りだという。街の発展と共に南へ、南へと延びていったという。その名前は演劇の代名詞にもなった。このアスファルトの下にはやはり石畳が埋もれているのだろうか?
 マンハッタンを西北から東南まで貫くこの通り。この街が出来るまで、そこには道らしきものはなかったのだろうか?それは意図的に斜めに貫通するように作られたのだろうか?それとも地形上、地質学的に何らかの問題がありそうなったのだろうか?
 今では、それがアベニューと交差するところでは必ず交通渋滞を引き起こしてしまうドライバー泣かせ、歩行者泣かせの道であるとも言えるけれども、昔はこの斜めに走る道はかなり便利なものだったのではないだろうか。実際、地下鉄のブロードウェイ・ライン(N線、R線)はかなり便利なものだ。この道の設計当時、完工当時どれだけの人がここまで車が増えることを想像したことだろう。全線開通時、市民に喜んで迎えられたことは想像に難くない。
 歩いてブロードウェイを北上するとセントラルパークの南西の角に引っかかる。そこが六十丁目。コロンバスサークルと呼ばれるそこでは、昔ながらの道路のシステムが今でも残っている。縦横斜めに交わる数本の道路の中心を円形にして、そこを周りながら各方向から来た車が思い思いに散っていく。その六十丁目からブロードウェイは両面通行となり、中央分離帯が設けられている。
 そこには植え込みがあり、春夏には花を楽しむことが出来る。そしてブロック毎にベンチが設置されている。まるで小さな公園が延々と続くようだ。一体誰の発案なのだろう?素敵な人に違いない。僕が好きなニューヨークで一番小さな公園たち。イエローキャブをはじめ様々な車に埋もれながら、それでもれっきとした公園であり続けている。
 春もこれくらい暖かくなると、ベンチで疲れた足を休める人も目に付き出す。車がこれほど多くなかった頃は、近所の人々の憩いの場であったのかもしれない。現状をよく考えてみれば、排気ガスと騒音まみれのこの公園たち。決してよい環境とは言えず、そんな目で見てみると座っている人の種類分けをすることが出来る。そこであまり見かけない人達については多くを語るのはやめておこう。ただ、僕は今も(多分)昔もこの公園たちが最もこの街らしい公園であると思う。僕自身もこの公園で朝からビールを飲んだり、ランチを食べたり、いつまでもつかまらないドラッグディーラーをイライラしながら待った経験がたくさんある。寒い夜も、蒸し暑い夏の夜もニューヨークにいることを実感させてくれる公園たち。この街の、そこに暮らす人々の小さな、小さな歴史を見続けてきた公園たち。排気ガスにまみれながらも、僕達をやさしく包み込んでくれる。

 街がさびれ、人が歩くことのなくなった道でも根本的な破壊をしない限りそこに道は残る。たとえ草が生い茂ろうとも道は生き続ける。誰かがたまに通るだけでいい。
 道。それを見ていると自分の歩んできた道を思い出すことがある。それは曲がりくねった、デコボコ道だけれどやはり道。たとえ誰も通ることが無くともやはり道。消えてなくなる事はない。たまにはそこを散歩しよう。

 あの公園の桜はもう咲いただろうか?公園が荒れて、道が見えなくなっても桜は咲くことをやめない。
 この街に桜が咲く季節、いつの日かブロードウェイを北から南までゆっくりと歩いてみたい。この街を見続けてきた道を。自分の道を歩むように歩いてみたい。いつまでもスリルがなくならないことを願いながら。
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by seikiny1 | 2005-04-07 13:49 | 思うこと
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