ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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<おやくそく>をやぶります。
 自分の中のおやくそくをやぶります。今後はないと思いますが、今回は単に自分の為だけに破ります。

【お約束】自分が他で書いたものをそのまま引用することはしない。
やはりそれは自分自身で納得がいかないし、僕が書くものに情報性はほとんどないけれ ど、その時々で思ったこと考えたことが大切であると思うからです。

【事情説明】『踊るで、しかし』というニューヨークのフリー誌にコラムを書かせてもらっています。それを読んで、ある一人の男性が大きな決断を下しました。
「自分が書いたことで他の人に影響を及ぼすことがある」、ということを自覚する為。全く個人的な理由です。

前置きが長くなってしまいましたが、以下本文です。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆
薄明の中で

 安ワインをぶら下げてドアをくぐる。それで全ては終わる。旧知の人としばし話し込み、そのうち初対面の人とも少しずつ話し始め、飲み食いしながら自然と場にとけこんでいく。時と共に人も増え、そしてある時間を境に減っていく。ここはパ-ティー会場。

 大体において攻めるよりも退くことの方が格段に難しい。攻めるに際しては、心の準備をはじめ時間をかけて様々な方策を練ることもまだ許され、最後には「やめた!」、と中止する道も残されている。しかし、いったん攻め込んでしまえばあとは全てを巻き込み、時として味方を捨ててまで突き進んでいくか、意を決して退却するか、二つの道しか残されていない(無条件降伏はやりたくない)。進むも地獄、退くも地獄という場面に遭遇することもそう珍しいことではない。
 退却は本当に難しい。限られた時間とおおいかぶさって来る様々な状況を把握して対処していくのでなければそれは退却ではなく、単なる逃亡になってしまう。

 客よりも従業員の方が目立つレストランのたった一組の客となった時に席を立つタイミング。
「そろそろ帰ろうかな」、と思っていた時にたまたま出会ってしまう久しぶりの友達。
 タバコを喫いたい時に話しかけてくるタバコ嫌いの友達。
 生活の端々にあるとても些細なことから、「あー、この世は戦場だな」と考え込んでしまう。
 古くから敗軍の殿(しんがり)をつとめる事は最大の難事と言われている。戦いながら退く。自軍の損害を最低限にとどめながらも誇りを失うことなく、戦いながらの退却。勇敢であるばかりではなく臨機応変であることが求められる。それは戦争という名の戦いの場だけではなくビジネス、賭け事、夢を抱いての渡米した者の帰国などあらゆる場面に顔を現わす。
 「逃げるが勝ち」、ということわざにあるように、客観的に見れば退く方がいいこともあるわけだけれど、やはりこだわりたいのはそのタイミングと方法。それは決して相手のためではなく自分のための戦いなのだから。「いかに退くか?」。こんな事に頭を悩ませているうちはまだまだどうしようもない男なのかもしれない。しかし、<退き際>の素晴らしい人に一種の憧れのような感情を抱いてしまうことがある。「エッ?」、「オッ!」という間に爽やかに消えてしまう。

 パーティーの後半には飲み続けながらも退き際を探していた自分がいた。しかし、ついに見つけることが出来ず、また今回も最後の客となってしまった。
 電車の乗り換えのために降りた駅でうたた寝。のつもりが熟睡。数時間後、うっすらと明るくなってきた空を見上げながら、まだ酔いの残る頭で退却の難しさを考えていた。
 もっと、あっさりと生きられれば楽なのだろうけれど。


『踊るで、しかし』2005年2月号
◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今後、こういう形の引用はないと思います。


 興味のある方は『踊るで、しかし』のHPを覗いてみて下さい。
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by seikiny1 | 2005-03-05 09:11 | 思うこと
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