ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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雪見酒
 午過ぎから降り始めた雪が少しずつ積もってきた。久々に浴槽にお湯を張り身を沈める。このアパートは建物も古いが浴槽も古い。ぬるめのお湯につかりながら、大きな窓の外に広がる出来立ての雪景色を楽しむ。<ケ・セラ・セラ>の一節が口元からもれ出ていた。
 新しい唄は全くと言っていいほど知らないけれど、古い唄の引き出しはかなり多い。不意に口からもれ出る、ということはやはりそれだけその唄に思い入れがあるからと言えるだろう。
 少し前のことになるが、そんな唄をいくつも思い出しながらあることに気付いた。Que sera sera, Let it  be, Blowing in the wind, Like a Rollingstone......。こんな唄が自然と僕の周りに集まって来ている。もちろん聴き始めた頃は歌詞の意味など全く考えることもなく好きになっていった。しかし集まって来たもの達は「なるようになるさ、なんとかなるよ」、となぐさめ続けてくれ、僕自身もまた意識していたわけではないが結果としてそういう生き方をしてきた。

 二月二十六日(土)。不意に思い立ち映画館へと足を運ぶ。昨年の封切り以来、アメリカでは大評判の映画“Ray”を観た。彼との一方通行であった付き合いも長い。アメリカへ来て最初に行ったコンサートはもちろん彼のものだった。映画を観ながらあの時の感動が身体の中に再生されていくのを感じる。背筋がゾクゾクとしていた。
 そんな中で一番心に残り、考えさせられたいくつかのシーン。
 彼が数々のマイナス・エネルギーを凝縮してそれを素晴らしいプラス・エネルギーへと転化させていく。録音中の苦悩のもとで突然鍵盤が踊り出し、ステージの揉め事の後で彼は爆発する。女とのいさかいの後突如としてピアノにかじりつき、いきなり「カントリー&ウェスタンをやる!」、と言い切ったりもする。それらは単にその直前の出来事を転じさせただけではなく、それまでに飲み込み、溜め込んできたマイナス達の導火線に火をつけて花火をあげたように思われた。あの時代に黒人であるということ、盲目と共に生きていかなければならないこと、幼き日の辛い体験、信じる者達の裏切り。そんないくつものマイナスを花火に変え続けた。だからこそ人の心を打つのかもしれない。
 単にマイナス・エネルギーを受け止めるだけでも大変であるのに、それを飲み込み、凝縮し、大輪の花火を打ち上げてしまう。彼の精神力の強さと、努力そして天賦の才能にただただ感服するほかなかった。メッセージにあふれた映画だった。
 多分、僕の人生はこれからも風に吹かれて転がり続けていくことだろう。しかし、「たまには小さな花火でも打ち上げる努力や我慢もしてみよう」、という気にもなってきた。それは小輪の花火、いや線香花火であるかもしれない。それはそれでいい。自分で納得の出来るものであれば。
 翌日、Rayを演じた俳優は最優秀主演男優のオスカーを手にした。

 土に降り積もる雪はコンクリート上のそれに比するといつまでも残っている。今年の新潟地方の積雪はどうなのだろう?
 北陸地方は冬の間、豪雪に閉じ込められてしまうと聞く。しかし、だからこそおいしいお米が取れ、美味い酒を作ることも出来るのかもしれない。春が来て、重い雪が融けだし信濃川の大きな流れを作る。その新しい生命は新潟平野を潤すことだろう。
 「東北・北陸の人はねばり強い」、とよく言われる。大地から、自然からマイナス・エネルギーをプラスにゆっくりと転化させる事を学んでいるからだろうか?気候と人間は密接な関係を持っていると思う。

 さて、新潟では今年どんな酒が仕込まれるのだろう?それがとてもおいしいものである事を願いたいし、信じたい。

 ボタン雪になってきた。今夜は雪見酒になりそうだ。
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by seikiny1 | 2005-03-01 13:40 | 思うこと
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