ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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娼婦
 小雨の降る十月の那覇国際空港に着いたのは真夜中も近かった。喫煙所へと走る人を横目に荷物を受け取り到着ロビーへ。到着が少し遅れてはいたが事前にお願いをしていたタクシー会社の運転手さんは待っていてくれた。最終目的地である名護市到着までの約一時間、運転手さんと基地、産業、観光、環境破壊そして複雑に絡み合ったそれらについて話をしながら闇に包まれた沖縄本島を北上した。
 ブセナ・ビーチは夜目にも開放感にあふれ、清い風が流れていた。

 日本の観光立国化を唱える人々がいる。世界中の人に日本という国を、その文化を見に来てもらいお金を落としてもらう算段らしい。阿蘇山にある地獄・垂玉温泉を少しだけ丈が短い浴衣を着込んだ人々がそぞろ歩くのもそう遠い未来ではないかもしれない。
 <観光>を受ける側はただ施設を整え、後は座して待つだけで終わることは無いはずだ。例えが適切ではなく、しかもその職に就く人々には腹立たしいことかもしれないけれど<観光>という言葉の向こう側にある僕のイメージを話そう。
 <観光>を受ける側を人間の職業に例えるならば娼婦、ストリッパー、芸能人をはじめとする有名人といったなりわいの人々とダブッて見えてくる。自分自身のプライベートな部分を切り売りする、という意味で。そこには美しさ、欲望、珍奇さ、そういったものが満ちあふれている。個人の持つプライベートな面とパブリックな面の境界線が極めてあやふやになり、そこにひとつのビジネスが成り立つ。表面上それほど目減りは目立たないけれど、内面から情け容赦なく削られていってしまう。
 愛する子供たちを抱えながら家計が立ち行かなくなってしまった母親の中には、意を決して苦界へと身をゆだねる人もいることだろう。しかし、実際にそこへ足を踏み入れてみると、そこは身を売るだけで終結するような世界でないことに気付くはずだ。哀しい話ではあるけれど、文字通り身も心もボロボロになるまで食い尽くされることも珍しい話ではない。そういった世界では、ひと通り以上の覚悟が無ければ生きのびていくことは極めて困難なほど、<こちら側>で見ていただけではわからないことにあふれている。気の遠くなるほどの様々な事を背負っていく覚悟が必要とされる。
 島国で、ごく最近までほぼ単一民族で占められてきた日本。ひと口に観光立国などと言うけれど、想像も出来ないような問題が続出してくるのは必至だ。そこには移民問題もあり、治安の悪化につながるような材料には事欠かない。環境破壊は避けて通れない道であるし、これまでの価値観が根本からひっくり返されることも出てくるだろう。朝起きてドアを開けたら軒先に誰かがウンコをしていた、なんてことは日常茶飯事かもしれない。
 果たして自分自身の生活をそこまで犠牲にしてまで、外からのお金または開発によって起こるで<あろう>新たな雇用が今の日本には必要なのだろうか?そこのところをしっかりと見据えて、そのうえで覚悟を決めてかからなければ取り返しのつかぬ事になる。国の内部どころか、人間の内部までが今以上にズタズタになってしまう危険がそこにははらまれている。
 鎖国をする必要は無い。どう開いていくか?

 僕自身の事になってしまい恐縮だけれど、ホームレス生活の最後の三ヶ月間を一日中道端に座り込むことで過ごした。街を、街行く人々を眺めながら、接しながら。
 それまでに路上生活を約六年間送っていたのだけれど、<道端に腰をおろす>ということは僕自身にとってとても大きな勇気を必要とするものであった。そこに[坐り続ける]=[見続けられる]=[プライベートの切り売り]はやはり辛いものであった。持論で行くとこれもまた観光産業と呼べるものであるかもしれない。時の経過と共に次第に慣れはしたが、それはやはり日常ではなく本来の自分の姿とは異なるものであった。ただ、その三ヶ月間が<無駄ではなかった>と断言できるのは、幸いにしてその行為を自分のための精神修養であると置き換えることが出来たからだと思う。これに気付き、そう思い込んだのは幸運以外の何ものでもなかったと思う。この経験が無かったら、こうして今これを書いている自分は無かったと思う。「幸運であった」、と言うほかない。

 もし「今でも、そしていつまで続くかもわからない期間で同じことが出来るか?」、問われれば僕は沈黙するしかない。
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by seikiny1 | 2005-02-18 12:09 | 日本
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