ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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霜の奥のDeep Blue
「パチッ」 「パチッ」 「パチッ」 
 ニューヨークの冬は乾燥している。毎年のことだがこの季節になるとあちこちで静電気が火花を散らす。
 乾燥している時に飲むビールは格別で、それが一番美味しく感じることが出来る季節でもある。
 そしてアイスクリームもことのほか美味しい。

 これまでの人生で一番美味しかったアイスクリームが現われ、そして消えて十年程になる。アラスカ・アイスクリーム。
 初めてその名を耳にしたのは、毎朝聴いていたラジオ番組の中だった。それは宣伝ではなく、ラジオのパーソナリティーが「美味い!」という感想を話していただけだった。そうであったからこそ強い印象を受けたのかもしれない。
 真っ青なコンテナにはいったアラスカ・アイスクリームはまたたく間にそこここの店の冷凍庫をブルーに染め、そして消えていった。まるで台風のように。台風の去った後、そこにはあたかも何事も起こらなかったかのように再び静寂が訪れた。
 アメリカ人のデザート、甘い物好きは有名だがアイスクリームもその例外ではない。昼食時のレストランの隣のテーブルで、スーツを着込んだ年配の男性達が食後に買って帰るアイスクリームの味について意見を闘わせているのを耳にするのもそう珍しいことではない。

 突如として現われ、そして消えてしまったアラスカ・アイスクリーム。
 多くの人に忘れ去られた頃、その原因をスーパーマーケットに勤める友人から教えられた。あまりにも爆発的な伸張を見せるその売れ行きに恐怖を抱いた業界最大手である某メーカーからの圧力であったらしい。はっきりと言ってしまえば、「アラスカを置くならウチの商品は全部引き上げる」、という半分脅しのような宣告だったという。
 もしこれが少しずつ販路を拡大していった地元のアイスクリーム・ショップや、他の地域でしっかりとした実績を持つメーカーだったら話もまたかわっていたのかもしれない。悪性のウィルスのごとく急激に拡大したアラスカ・アイスクリームは、脅威以外の何者でもなかったことが察せられる。
 「出る釘は打たれ、打たれた後にこそその真価が問われる」、と言われてしまえばそれまでだが、こういった事件は夢の国、自由の国アメリカの持つもう一つの横顔であることに間違いはない。この国は夢、自由、平等、革新などの言葉で語られることが多いが極めて保守的でもある。ことさら最近は年老いた大国のイメージが僕の頭にまとわりついて離れることはない。一人のマイノリティー、異国人として生活をしていると事の大小こそあれそういった場面にも度々遭遇する。それは色々と形を変え様々な場面で、国策にさえも姿を現わす。移民の国として成り立ち、成長を続けてきたこの国が様々な理由があるとは言えそれを大幅に規制する動きをはじめたことにもそれは見て取れる。米国で航空機に搭乗する際に実施されるセキュリティー・チエックで国際線よりも国内線の方が厳しい意味がなんであるかわかりますか?
 民主主義とは所詮、机上の空論に過ぎないのだろうか?
 この国の短い歴史を見ているとついついそんな事を考えてしまう。
 
 確かにコンピューター・ウィルスは悪かもしれない。僕自身も何度もその迷惑をこうむった。しかし、その発生によって技術的に進歩し、改革がなされてきたこともまた否めない事実だろう。
 たった一つの大きな力のみの存在しか許されない社会は健全ではない。様々な個性がぶつかり合いながら、和を求めて試行錯誤を繰り返すことによって初めてそこになにかが生まれる可能性が生まれる、と信じる。他を完全否定することなく。
 仲良しなだけではなくケンカもする。自分に向かってくる者を問答無用で握りつぶす行為の後には何も生まれはしない。それは単なる足踏みどころか、後退以外の何ものでもない。本当に自分がかわいいのであれば、他に目を開き対峙すること。

 三年ほど前に、小さなデリの冷凍庫の奥に懐かしいパッケージを発見した。変形をしてしまい厚く霜に覆われてしまったディープ・ブルーだった。
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by seikiny1 | 2005-02-04 13:32 | アメリカ
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