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ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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時間無制限一本勝負!
 やっと食欲が戻った。
 昨年の二月以来どうしてそれが落ちたのか、今回どうしてそれが戻ったのかもだいたい理由はわかっている。かつては朝・昼・晩きっちり、しかも大量に食べなければ胃袋が落ち着くことはなく、<美味しそうにモリモリ食べる>というのが多分唯一のチャームポイント(?)だった。燃費が悪いのか、身体を包み込む肉の質自体は多少変わったがいくら食べても体重だけは十七歳の頃から変わらない。僕の世代の標準的なそれを保っている。

 先日、一週間ほど他出している間は食事のほとんどをBuffet(僕の世代でビュッフェという言葉からまず思い浮かべることが出来るのは鉄道の食堂車だが、今でもそう呼ぶのだろうか?)と呼ばれる形式で取った。一定の料金を支払えば好きな料理を各自選んで食べることが出来る、というスタイルの食事。Buffetに一番近い日本語訳を探すとすれば多分<喰い放題>ということになるのだろう。
 その発祥は多分立食式のパーティーから来ているのだろう。各自が思い思いに飲み食いをしてくつろぐ。ここはパーティーの国で、住み暮らしているとどうしてもそういう機会に行き当たってしまう。しかし、呑ん兵衛の僕はついつい飲みに走ってしまう傾向が強く空きっ腹の結果悪酔いという辛酸を幾度もなめてきた。その挙句につかんだ対処法は、パーティの前には必ず喰っておくこと。これで飲む事に集中することが出来た。
 呑ん兵衛と似たり寄ったりなのだろが、ガツガツと喰う姿はいただけない。それはモリモリとはまた違った映り方をする。食い漁ることは、鯨のように飲むよりも僕の目には浅ましく映るのだ。単なる酒飲みのいいわけかな?偏見は改めなければいけないとは思うのだが……。

 <喰い放題=時間制限>という回路が組み込まれているのだろうか?今回Buffetで見かけた日本の方のそのほとんどから一様に何か焦っている印象を受けた。テーブルと料理の間を短いインターバルで行き来する。チョコチョコと歩くスピードが速い。常に目が宙を舞って獲物を探している。そして、その身体の周りに独特のオーラのようなものを感じ取ることが出来た。食文化の違いなのだろうか?Buffetと喰い放題は似て非なるものであると思う。
 食に関する思い、その姿勢は人ぞれぞれだろう。決して安いとは言えない金額を払っていてもサッと出てしまう人も結構いる。また僕のように二、三時間じっくり時間をかけて少しずつ食べる者もいる。三度目のBuffetを食べながら「あぁ、これなら朝から晩まで食べ続けるのもいいな」、といった思いが頭をよぎった。実際、彼の地ではBuffetはひとつの名物と化しており多くのホテルが朝・昼・晩と食事を提供していながらどこもほぼ満員。それゆえ、各メニューの間で客を入れ替えることは不可能に近い。そんな事を考えながら僕の胃袋は少しずつ一年前の大きさを取り戻していった。
 週末のシャンペン・ブランチなるものに行った時にはチョボチョボと飲み食いしながら三時間半ほどおしゃべりの後レストランのドアを出た。その一時間後には少し早い見事な宿酔になっていた。
 人の事をいやしいなんてとても言えたもんじゃない。

 日本の旅行ガイドブックにはBuffetの事を食い放題とでも書いてあるのだろうか?食べることだけではなく、その時間や空間を楽しむことも是非書き加えて欲しいと思う。そういった文化をしっかりと紹介するのも書き手の責務だと思う。旅行中の時間は貴重なものなのだろうが、短時間で満たしたおなかではその後の予定にも差し障りが出てくると思うのだけれど、如何?旅先でのゆとりというのもまた格別なものだ。キチキチの旅行、生き方はいつか、どこかにしわ寄せが来るものだ。宿酔のように。

 さんざんBuffetを堪能した僕を待っていたものは?
 ニューヨークへ帰り日本語のフリーペーパーを開いてみると、その第一面から<喰い放題>の四文字が飛び込んで来た。もちろん週末に出かけることになるだろう。熟練のシェフが握る納得の味らしい。
 時間制限:二時間、お値段:十八ドル也。
by seikiny1 | 2005-01-21 11:32 | 日本とアメリカと
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