ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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時刻表はいらない
 日本に住む人にとっては当たり前のことかもしれないが、時刻表どおりに電車がホームへ滑り込む、これはなかなか気持ちがいいものだ。まさに<電車が滑り込む>といった感じで、ある種の神々しい印象を受ける。到着前のホームに立つ人々はしきりに腕時計に目を落とす。気付いてみれば僕もその一人になっていた。電車の遅れでスケジュールの変更を余儀なくされる人は一本の電車に何人くらい乗っているのだろう?日本の電車は時刻表どおりに来て当たり前。

 ニューヨークの地下鉄には時刻表なる物は存在しない。もちろん運営する側にはあるのだろうが、利用者がそれを目にすることはない。時刻表自体が存在しないのだから、あまりにも前の電車との感覚が開かない限りいらいらすることもなく精神衛生上にもいい?ただ、せっかちな人はいるもので、そういった人達は腕時計ではなくホームから身を乗り出して遠く暗闇に電車のヘッドライトを探す。腕時計と同じで、見たからといってどうなるものでもないのだが。

 日本人の時計やカレンダーとの出会いにはある種の運命的なものを感じる。それほどこのカップルはピッタリとくっつきそれを最大限に有効利用してここまで来た。時を最大限に<生かす>ことにより我々はその中にある可能性を極限まで追い求めてきたのだろう。それを細分化してまるで精密機械のように。世界で一番時を有効に使っているのは日本人であるかもしれない。ただ、それは非常にもろいものであるとも言えるだろう。電車の時刻表がその人の一日を決めてしまうように。精密すぎる機械は歯車がコンマ数ミリずれただけでも機能しなくなってしまう。
 眼を江戸時代に移してみると時間は<子(ね)の下刻>、暦は<冬至>や<立春>に代表されるような大まかなもの。そして、それが生活に実に密着して機能していたようだ。それなりに文化は花開く。時そのものに幅があり、その分遊びがあった。それでも歯車は回っていく。

 朝の歯磨きから、夜の歯磨きまでの一日の行動を分刻みのスケジュールで行う人がいる。
 日本では年末になるとカレンダーがどこからともなくやってくる。

 アメリカの街を歩いていると、しばしば時間やその日の日付を尋ねられる事がある。
 アメリカではカレンダーは買うものだと相場が決まっている。

 週末に街を歩くと、楽しもうという雰囲気が満ちあふれている。生活のゆとりというやつだろうか。さて、週休二日制がほぼ定着した日本に次に必要なものはなんだろう?
 是非、電車の時刻表の撤廃を実施して欲しい。一分刻みの生活に十分の幅を持たせる。「週休二日制よりこちらを先にやった方がよかったのでは?」、とすら思う。寸分の刻みのないものにあそびを持たせる、実際、回り続けてきた歯車は磨耗してあそびが生じてきているのだから。「ゆとり、ゆとり」と呪文のように唱えながら頭を抱え込むよりも、時刻表をなくしその分運賃まで下げてしまえばもっともっと社会は活性化し、病んだ事件も減少するのではないだろうか?

 時間は大切にしなければいけないものだ。特にそれが他人のものの場合はなおさらだ。時間に正確であるに越したことはない。ただ、時には縛られたくはない。しかも自分自身で。時を追い、日を追い、そして気付いてみたら追いかけられているような生活はまっぴらだ。

 実家へ帰っていた時、トイレの壁には標語を書き添えた日めくりカレンダーがぶら下がっていた。数日前の日付のそれを何度か調整した。
 姉の家に滞在していた時、居間には日めくりカレンダーがあった。ほとんどいつも前の日付を指していたのだが、僕は手を触れなかった。朝起きてそれに目をやるとたまに一日分だけ破り取られていることがあった、「オッ」と思いながらコーヒーを飲むためにテーブルに近付くといつもそこには、破りとったカレンダーの裏側にしたためられた姉から僕へのメッセージが置かれていた。
 実家が、姉の家がなぜ心地よかったかというと、それは多分その人達が家族であるばかりではなく、僕と同じカレンダーへの距離感を持っていたからなのだろう。

 久々に日本へ帰り、商店や飲食店の壁にカレンダーや時計を見ることが少なくなってきているのを眼にして、ほっとしている自分がいた。
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by seikiny1 | 2004-12-29 07:06 | 日本とアメリカと
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