ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
お願い
当サイト・メインコンテンツ内にある全ての著作権は筆者に帰属いたします。無断転載及び流用は固くお断りいたします(トラックバックに関しましてはこの限りではありません)。
以前の記事
カテゴリ
コタツ
 最近とんと聞かなくなったニュースのひとつに「○○県で一酸化炭素中毒により死亡」、というのがある。昔の暖房用燃料の大部分は炭、石油であり、コタツや火鉢そして石油ストーブが主な暖房器具だった。冬場の部屋の換気にはことさら気を使ったものだ。
 高性能、高燃費の暖房器具が発明され、普及し、それに伴い一酸化炭素中毒で亡くなる人もかなり減ったようだ。文明の進化とはありがたいものだ。が、その一方で新たな死因があちこちで出てくるのもまた事実。文明とはまさに両刃の刃。

 コタツのある風景というものに長い間接していない。ニューヨークに住む日本人の中にはコタツを持っている人もいるが、その数は少ない。手に入りにくいのが最大の理由だろうが、アメリカでは全館・全室暖房がそのほとんどでコタツの必要性を感じる人は少ないだろう。
 「ニューヨークに来てまでコタツ!?」、と思われる方もいるだろうがコタツに惹かれる人は多い。ここに来てまでコタツを買う人達は、暖房器具としてではなくコタツがかもし出す空気を買うのだろう。
 コタツのある家庭の図を想像してみると、それはやはり暖かい家庭風景となってくる。コタツの上に乗ったかごの中にはみかんやおせんべいがあり、四辺には思い思いに人が座る。ある者は口を動かしながら新聞を読み、ある者はテレビに釘付け。ある者は編み物に熱中し、ある者は横になって眠っている。布団の中では足がぶつかり合いながらもそれぞれの場所を確保し、はしっこには生乾きの洗濯物が。たまに子供が転がっていたりもする。
 コタツとはてんでばらばらな家族がひとつの何かを共有できる場であるのかもしれない。
 僕が中学生になった頃、サイズこそ小さいものの自分専用のコタツを持つ友達が出てきた。どんなに小さくてもそれはコタツだった。僕は彼らがとてもうらやましく、自分用のコタツが欲しくて、欲しくてたまらなかった。その夢がかなった時、僕は十九歳になっていた。
 ここまでコタツに執着心があるのは僕だけだろうか?結構、多くの人が自分用のコタツに憧れた時期を持っているはずだ。
 コタツ欲には独立欲や家を買いたいという気持ち、そして家庭に対する思いに通じるものがあるのではないだろうか?そう考えてみれば、家族がなんとなく集ってしまうコタツの意味、魅力、そしてそこから新たに生まれるコタツ欲というのもわかってくる。日本の家庭にコタツを取り戻せば、頻発している悲しい社会問題も少しは減るかもしれない。

 当然な話だが、アメリカの家庭にコタツはない。
 「それに替わる物は?」、と考えてみるとやはり答はBBQセットだろう。<自宅の庭でBBQをする>。これは我々が思う以上に、アメリカ人にとってはかなり特別なことである。それはひとつの夢であり、また理想とする家庭像でもある。
 少し前の話になるが、家を買った友人がいた。引越しの当日、新居に運び込まれた荷物には全く手を触れずに、彼はデパートへと走った。BBQセットを買うために。その夜、奥さんと二人きりのBBQパーティーを開いたという。ニューヨークの二月だった。
 アメリカ人にとってBBQというのは単なる食事にとどまらない。そこはひとつのコミュニケーションの場であり、それを取り仕切るのはもっぱら男の役目。それには独立したという自覚と、自信、満足、そして大切な家庭の環というものが伴うようだ。夏になれば毎週末のようにBBQをやる家庭も決して珍しくはない。

 不幸なことに僕はこの世界でたった二つの国しか知らない。
 コタツとBBQの国。そこに共通しているものは何か?
 それは<火>。人類最大の発明であるとも言われる。想像の域を出ないが、この地球上のあちこちで火を囲んだコミュニケーションが行われているのではないだろうか?それは肌の色、言葉、風土、文化などに関わらず人間の本能から出てくるもののはずだ。日が落ちて暗くなったあと、地球のあちこちで人々が火を囲む姿が目に浮かんでくる。
 不思議なことなのだが、キャンプなどで焚き火をするとどこからともなく人が集まってくる。自然と火を中心にして語り、食べ、飲み、そして知らない者同士が仲良くなる。
 火には目で見ることの出来る実用性だけではなく、とてつもない力があるようだ。

 戦争の火ではなく、平和な火が灯り続けるように。

 あぁ、久しぶりにコタツで居眠りをしてみたい。
[PR]
by seikiny1 | 2004-12-23 09:20
<< のし紙 和洋 >>
記事ランキング 画像一覧