ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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文化マッチ
 タバコに火を点ける時
 日本人は押すようにマッチをする。
 アメリカ人は引くようにマッチをする。
「マッチをする」という言葉が日本では死語となりつつあるかもしれない。

 小さな頃、美味しそうにタバコを喫うまわりの大人達のそばにはいつも鶴の絵が描かれた徳用マッチの小型版(?)だった。
 少し時間が経つとそれは金属製のガスライターに取って替わられ、あっという間にその座を百円ライターに譲った。
 アメリカ映画やテレビの画面の中では男達、そして女達がさりげなく、しかもかっこよくマッチをすりタバコに火を点けていた。それは箱型ではなく、ましてや徳用でもないブックマッチ。たまに日本でも見かけることはあったが、それらのやすりの部分は映画のようにマッチの背中ではなく開閉する側についていた。

 Zippoの質実剛健のかっこよさにも惹かれたが、それでも僕をアメリカに引っ張ってきたのはマッチだった。
 朝陽の射し込むダイナーの長いカウンターでの朝食。
 無口なバーテンダーのいる、昼間の薄暗いバー。
 冬のビーチを散歩する恋人達。
 気付いてみたら、そんな小さな、ごくありふれた光景が僕の中に積み上げられていた。

 多分僕達、もしくはもう少し下の世代くらいまでが敗戦国としての自意識を無意識のうちに持っているのかもしれない。マイルドに洗脳されていたのかもしれないがやはりアメリカは憧れだった。決して洗練されているとは言えないが、そのバタ臭さが不思議な匂いを放っていた。そうして、その匂いに引かれ自分の気持ちに正直に僕は歩いてきたつもりだ。そんな空気の中で生活できる事を幸せに思う。
 ただ、もし、今の時代に僕が育っていたらどうだろうか?
 情報の氾濫ゆえのあまりにも多い選択肢。その上、アメリカに関する情報は多分以前では報じられなかったようなものまでも耳に入ってくる。そんな濁流の中でアメリカという枝を掴んだろうか?それ以前にその枝を見いだすことが出来ただろうか?たとえ運良くそれを掴んだとしても、それは小さな選択に過ぎず(しかもマイナス要因の多い)この国に来ることはなかったかもしれない。それを思うと、いい時期に生まれたと思う。

 禁煙ブームのさなか映画やテレビの画面の中に、かっこよくタバコを喫う男女を見出すことがめっきり少なくなってしまった。その上、強国の論理をゴリ押しするこの国から顔を背ける人も多いだろう。こんな、アメリカに夢を抱いて渡ってくる人達がこれからもいるのだろうか?
 僕はこれからもいるだろうし、そうあって欲しいと思う。
 日本にとって最も近い外国であることもその一因だが、やはりこの国の持つ文化の磁力というものはまだまだ大きいと思う。たとえかっこよくタバコを喫う男がいなくなっても、この国の文化は人々をひきつけ続けるだろう。
 文化には政治や経済を超える力がある。
 第二次大戦後の日本への進駐軍はそれを上手に使い統治をした。
 戦時下の日本でも、軍により検閲、統制が行われた。
 世界史をひっくり返せば、兵隊より先に宗教やそれにまつわる文化が送られた事も多い。
 政治家は文化の持つ力を知って、それを上手く操ってきた。

 願いはただ一つ、文化が政治を動かすことがあっても、政治家や金持ち連中の道具にはならないこと。


 僕の周りには未だにライターを使うことなく、マッチを使ってかっこよくタバコに火を点ける男達が大勢いる。
 あぁ、道はまだまだ遠い。
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by seikiny1 | 2004-12-20 09:18 | アメリカ
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