ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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食パンの値段
 外で酒を飲むことはよくあるのだが<食事をする>ということを中心に外食をすることは、ほとんどと言っていいくらいにない。僕の場合は、どうしても酒を飲みつつ何かをつつく、という事になるのであくまでも軸足は酒にある。ただ、同席する人の意識は<外食をしている>ということが多いようなのだが。
 僕は自炊派である。

 昨日、食材が乏しくなってきたのでス-パーマーケットへ行った。とは言っても、去る週末よりの水道工事がいまだに継続中で、少なくとも今週末までは台所の水が出ない、流しに水を流すことも出来ない。かろうじて使えるのが風呂場、そしてトイレだけは百パーセント機能している。そういったわけで、メニューの中心はどうしてもサンドイッチとパスタとなる。
 健康の事をあまり気にしない上に美食家でもない。買物をする場合の優先順位はどうしても安さになる。昨日スーパーで買った内訳は、食パン(99セント)、ハム(99セント)、乾パスタ(69セント)。その前に日本食材屋へ行きマヨネーズ(2ドル99セント)、豆腐(89セント)を買っていた。

 ここニューヨークでは街のエリアごとにガラッとその肌合いが変わる。そして商売というものはやはり需要を無視することが出来ないのだろう、同系列のスーパーでも立地によりその商品構成が少しずつ変わってくる。
 ユダヤ人が多いエリアでは、kosher foodの品揃えが豊富であり、
 ヒスパニック系の多いエリアでは、豚肉やまめ製品に目を奪われる。
 富裕層の住むエリアでは、グルメフードや輸入食品が整然と並べられ、
 僕の住むエリアでは、やたらと<99セント>と大書したオレンジのステッカーに買い物客が足を奪われる。
 そう、ここは貧乏人の住むエリア<だった>。

 なぜ<だった>と書いたかというと、それは今ここが過渡期のど真ん中にあるからだ。古くから低所得者向けの市営住宅ビルが立ち並ぶこのエリア。長いこと貧乏人の街だった。ところが、ここ数年交通の便の良さ、(多分)比較的手ごろな不動産物件の値段、大きな公園の近所であるなどの要素に目をつけた、俗にヤッピーと呼ばれる層がなだれ込んでいる。それは勢いを増すばかりだ。
 上記の条件に加え、数ヶ月前にショッピングモールの完成、プロ・バスケットボール・チームの本拠地建設予定、そして高層ビルの建設予定などが加わりまさにブームタウンの様相を呈しつつある。(「あぁ、大家さんが強気だから今年も家賃上がるのかなぁ」、と愚痴もついつい出てしまう)
 もちろん、上記の二つの建設に地元住民は大反対。この国の名物のひとつ反対運動を繰り広げている。そして、その運動の中心はやはり白人である。
 いや、この人達の特徴として思うのは、-それはこの国の歴史と、多分将来像にも重ね合わせてみることが出来ると思う- 先住民でもないのにひとたび自分たちが何らかの権利(?)を手にすると、ヒステリックにガンガンと叫びたて、大騒ぎすることだ。僕の目から見れば「そもそもその糸口を作ったのはあなた達ではないですか。先住の人達があなた達をどういう目で見ているか、その暮らし向きがどんな影響を受けたか考えたことがありますか?」となるわけだが……。こうなる事は流れとしてわかりそうなものなのだが、(これは僕自身にも言えることなのだが)「俺は例外だ」と思ってしまうのだろう。

 ショッピングモールの着工前後から街には動きがあった。
 中国人経営の魚屋、メキシカン・レストラン、自称「デパート」のよろず屋、99セント・ショップ、細々と営業していた昔ながらのバー……。それらの灯が消えていった。ある者は大型店舗には抗し切れなくなると判断して廃業、またある者は法外な家賃の吊り上げで出て行かざるをえなくなった。そして、その後にはなぜか洒落たレストラン、ラウンジ、小粋なコーヒーショップなどしか出来ない。多分これがヤッピー層に対するマーケティングなのだろう。
 この街は変わりつつある。

 そこが日本であろうと、アメリカであろうと僕はある町へ行けば必ずスーパーマーケットへ入ってみる。そこで、その町の空気を吸う。
 日本の地方都市では、以前は元気がなかった個人商店が協力し合いそれらが集まった小さなマーケット、そして昔からの商店街にエネルギーを感じた。
 一方、東京のスーパーマーケットでは、その規模や品揃え、集客力の割りにエネルギーを感じることはなかった。

 あのスーパーマーケットから99セントの食パンが姿を消す時、僕も次の街を見つける事になるのだろう。
 あの食パンを追いかけて。
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by seikiny1 | 2004-12-17 06:34 | 日本とアメリカと
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