ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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抑止力
交差点で立ち止まる。
歩道からおりて数歩のところ。
信号は赤。青になると白になる。
エンジン音が大きくなって、小さくなる。

信号が白に。
横断歩道と平行に引かれた白線で立ち止まる車。
たまにはみ出るヤツもいる。
それでも、ほとんどは行儀よく地面に描かれた印で立ち止まる。
もし、白線がなかったら……。
車たちは横断歩道近くまでにじみ出てくることだろ。
人に節操というものはあまりない。

10年ほど前、耳にしたこと。
「どうせひかれるんだったら、横断歩道の枠内でやれ」と。
内と外では補償金の額がまったく違ってくるらしい。
そんなことが、どこかにひっかかっているのか、
ぼくは横断歩道の真ん中を渡る。

1本の線。
踏み越えるにはなんの物理的障害はない。


アメリカでビルの屋上へ出られるところは少ない。
ほとんどの場合、堅牢な錠がおりている。
日本だと、
涼みに出たり、
月を見に上がったり、
仕事をサボったり、
ビールを持って花火見物をしたりできるのに。
もちろん宙に身をまかせることだってできる。
そこにあるのは申しわけ程度のフェンスばかりなのだから。
鳥籠の中にいるようなエンパイアステート・ビルの展望台。
そんなところからだって、たまに鳥になる人はいる。
大切なのはそこに線があるか、ないか。
一拍という時間は短く、長い。


垣根なんて、
塀なんて、
門なんて、
簡単に乗り越えるこができる。
戦国時代の濠や城壁とは違う。
それでも、人々は築く。
肉体を拒むものとしてではなく、
あいつの、そして自分の脆弱な精神を映し出す鑑として。
塀の上を歩く猫たち。

さて、ぼくを抑止しているものはなんだろう?
いいことなのか。
それともわるいことなのか。

とりあえず抑止力を振り払い飲みに行こう!




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by seikiny1 | 2010-05-21 05:30 | 日ごろのこと
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