スパム・メイラーだったことがあります。
3ヶ月ほど。
それが仕事だった頃。
いや、それによって直接的にも間接的にも、
1セントの収入も結局はなかったことを考えれば、
職業的スパム・メイラーというよりも、
ボランティア・スパム・メイラーという方が的を得ている。
Kata, Kata......Click,Click......
3ヶ月かけて送ったメール総数は約6000通。
振り返ってみるとよく送ったものです。
2002年という時代だったからこそ成し得た技で、
今だったら迷惑メールホルダー経由奈落行き。
実は本は出たものの営業予算ゼロ円。
いったい何を考えて本を発行しているのかわからない出版社でした。
白菜を仕入れてシャッターを開けない八百屋みたいなもんです。
今になって考えてみると、はてなマークばかり。
もちろん当時は「本が出る」そのことだけに舞い上がってしまい、
はてなマークなんて浮かんでこない。
こんなところにもオメデタイ性格が顕著に出る。
新刊として本屋の店頭に並ぶのは数週間。
早ければ1週間で無数という名の海の一滴になってしまう。
浮かんでいるならまだしも、
酸素タンクを背負ってまで海底を物色する人はほとんどいない。
あとは闇から闇の裏街道をまっしぐら。
その上、こちらはNYに釘付けで、
グリーンカードはおろか、パスポートすら再取得していないのだから、
日本の本屋行脚するわけにもいかない。
いや、その前に飛行機に乗る金なんてなかった。
出版社とて、どんな頭をしているのか、営業に1銭すら使う気はない。
「とにかく誰かに気づいてもらわなければ……」
そんなわけで始めたのが自己本紹介メール作戦だった。
新聞社、雑誌社、放送局、書店では飽き足らず、
<本>、<書評>、<読書>、<ホームレス>……
考えられる限りのキーワードでGoogleの世界を駆けまわることに。
送りに送ったその数が約6000通だった。
「迷惑だと思わないんですか……」、長文のお叱りメールを頂いたり、
HP上で糾弾する人もいた。、
しかし返事のほとんどは好意の感じられるものたち。
紙にネットに電波に載せてくださった人たち。
「約6000通出して、400通近くの返信という数字。悪くはありませんよ」
励ましてくれたマスコミに携わる人もいた。
大手チェーン書店の社長さんから返信をもらい大々的に押し出してくれたり。
地方書店主の奥さんは、ぼくの地元書店の娘さんであったり。
買って、読んでくれたではなく、多くの人にすすめてくれた人が何人もいた。
今、思い出し、あらためてありがとうを言いたくなった。
「ありがとうございます!」
ぼくにとっては無数と言いかえることのできる点を世に放ち、
そのうちのいくつがキラリと輝いた3ヶ月。
今でも星座を結んでいるのは10粒くらいだろうか。
スパムメール座。
しかし星々は増殖をくりかえし、星座に、星雲になっていく。
10/6000=0.167%
この数が減ることはない。
ブラックホールとならない限り。
8年前だったからこそ出会えた人たち。
18年前だったた出会う可能性のなかった人たち。
星が生まれるネットの世界。
星くず兄弟の伝説。