ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
お願い
当サイト・メインコンテンツ内にある全ての著作権は筆者に帰属いたします。無断転載及び流用は固くお断りいたします(トラックバックに関しましてはこの限りではありません)。
以前の記事
カテゴリ
I'm living on the street, man......
悪い季節じゃない。
あくまで冬と比較してだけれど。


去年、風が冷たくなりだした頃、突如、出現した大きな白い看板。
2週間ほどで"Under Contracted"の小さな看板が増えていた。

「どうすんの?」
最初にきいてみたのは昨年の12月。
「どうしたの?」
の問いには答えてくれなかった。
大晦日の夜にに降る雨。
ぼくは飲み屋へと向かい、カッパを着たオジサンは道具を外へ出す。
「猫のこと頼むよ……」
うつむきながら。

「家族の事情を考慮してくれて、しばらく延ばしてくれたよ」
陽気に期日延期の話をしてくれた年明け。
「がんばってね」
翌日、ぼくは少しだけ明るい気分で日本へと向かう。


スーツケースを引きずって帰ってくると、
「約束しただろ。俺はしぶといんだ!」
2週間ぶりのニューヨーク、
最初に笑顔で迎えてくれた隣人は彼だった。

通りに面した部屋に聞こえてくるバラバラに音をたてるショッピングカートの4輪。
ビール瓶がぶつかりあう音。
そんな音が聞こえてくるたびに心のある部分が青色から赤みを帯びてくる。
緑が深くなってきた最近では、
垣根の間からのぞきこむようにしてショッピングカートの所在を確かめて帰るのが日課となっていた。

夏になるとフロントヤードから肉を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。

"Hey, you wanna beer?"
誰もいないのにあたりを見回しながらささやくオジサン。
破格値で譲ってくれるビールの出所を聞くほどぼくも野暮じゃない。
ぼくの部屋で生産される大量の空き缶は毎週木曜日にオジサンの家に放り込む。
酔っ払った朝、10ドル分ほどの空き缶を見つけて引きずっていったこともあった。

"C'mon Baby! Come eat! Come eat!!!"
毎夜、8時頃、裏庭に面した窓から怒鳴り声が発せられると闇がうごめきだす。

10月の朝、庭の片隅に膝を立て70cmx30cm程の穴を鉄板で掘るオジサン。
土をかけ、四角い石を立てたあと長い間ひざまずいていた。
その日は一日中、猫語でしゃべるオジサンとガールフレンドの声。


オジサン。ぼく。あとひとり。
3人で半野生の猫くんたちの世話をしている。




ベッドマット、ソファー、棚、テレビ、冷蔵庫の扉、アリゾナ・アイスティー等身大看板……。
歩道に出しても誰も持っていかないほどくたびれたガラクタたち。
彼の引越しが決まったのはひと月前。
引越しというより退去。
先週木曜日にはブツブツといいながらも、
笑みまじりてガラクタをフロントヤードに戻す彼の姿。。
「あっちの都合で1週間だけ延びたんだ」
太陽の下、黒いレジ袋で巻いたハリケーンという安ビールを飲みながら。


「どう?猫たちは?ちゃんと食ってるかい?」
昨日、隣人から聴いた話では再度1週間延びた、と言うことだったのだが……。
「1週間延びたんだって。よかったね」
"I'm living on the street, man......"
つぶやく。
「ちょぅとうちに寄ってく?」
"Hey, I got to catch up that guy. See you later, my friend."
オジサンは止まった車から降りてきた少年を急ぎ足で追いかけはじめてしまった。


b0063957_827503.jpg


隣の家のゲートは鎖と錠前で巻かれてしまった。
そこは出て行くためのものではなく、入ろうとする者を拒むことしかしない。


にほんブログ村 海外生活ブログ ニューヨーク情報
[PR]
by seikiny1 | 2010-05-09 08:27 | 日ごろのこと
<< Almighty: 全能なる…… 杖引き >>
記事ランキング 画像一覧