ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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ペーパーウェイト
「それがさー、講演で日本へ行ったときのことさ。
時間があったから、なんとなく会場準備の様子を見てたんだ。
びっくりしたのは、まず体育館の両端にしゃがみこんだ2人が手にしたひもをピンッとはるんだ。
ギターの弦みたいにまっすぐにね。
次に伸びきったひもに折りたたみ椅子の足を合わせて並べていく。
二人の男は長さをはかりながら横に移動して……そんなことを繰り返していくんだ。
もちろん演壇では歪みを監視する人が小さな修正の指図をしながら」
カウンターの向こうにいるJohnが笑みをまじえて問いかける。
「で、どうしてそんなまねをすんだ?」
「……いや、わからない……」
Davidは苦笑まじりにつぶやいた。



「まったくバカなことをやるよね。さっさと並べちまえばいいものをさ」

「いや、よくわかんねぇけど、
こんなとこからゼロ戦やwalkmanが生まれたんじゃないかい」

「いやー、ほんとだよね。まったく彼らの思考回路はどうなっちまってんだろう」

あの苦笑は何を物語っていたんだろう。



ブロードウェイで信号待ち。
南にはこのエリアの顔、ビルボードが雨ににじむ。
最近はLCDタイプが主流になってきていて、
真ん中の特等席では踊るMichelobの茶色い瓶が2本、いや3本。
上にはTDK、そのまた上に2段重ねのTOSHIBAが、
不規則な積み木のように危うげなバランスで連なっていく。

右肩越しに見上げたTOSHIBAやTDKの赤い文字。
なぜか感じるのは空虚さだった。
20年程前、Cup Noodleのビルボードが登場したときの、
どこか誇らしさにも似た胸の高鳴りが少しだけ再生され、
光る積み木と交叉し離れてゆく。

北には、小雨をうっすらと染めながら移動を繰り返すBarclay Capitalの青い電飾。
少し前まではLehman Brothersの緑色が雨粒を乱反射させていたところだ。

角の”MAXIE'S Restaurantの赤いネオンサイン。
"IE'S" と "ant" の赤い灯が消えてしまっている。
文字の欠けたネオンほど哀しく、憂鬱にさせるものはない。

青に変った信号を渡り楽器屋の前。
「最後のホームレス」と言われている彼、
説得に応じ、ついに廃業してしまったのか、
$4500の値札を下げたダブルネック・ギターの入るショーケース前にいつもの姿はない。


爆弾騒ぎがあったからなのか。
雨降りのせいなのか。
月曜日だからなのか。
季節のはざまに立っているからなのか。
それとも自分を映し出しているだけなのか。
今朝のタイムズスクエアは、予算不足で手入れの行き届かない公園のよう。
ボンヤリと水銀灯が灯っているような。
看板ばかりがやけに目立つ。
パーカーののフードにあたる雨粒を感じながら、
煙の立ち込めるバーで10年以上前に交わされた会話を思い出していた。


仕事場。
四角いペーパーウェイトを書類の辺と平行に直す。
体育館に張られたひもの理由は
「気がすまないから」としか説明できなかった。

ペーパーウェイトがわりの石でも拾いに行こうか。 




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by seikiny1 | 2010-05-04 08:12 | ニューヨーク
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