ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
お願い
当サイト・メインコンテンツ内にある全ての著作権は筆者に帰属いたします。無断転載及び流用は固くお断りいたします(トラックバックに関しましてはこの限りではありません)。
以前の記事
カテゴリ
熱海でランデブー
b0063957_8513179.jpg

<熱海はこんな町でした>




今さらながら。
インターネットは多くのスタイルを変えてしまった。
海外在住者特有の病。
日本の活字に対する枯渇もほぼ解消された。
ホイッスルを吹きながら車の間を縫う自転車。
メッセンジャーのニーサンも以前ほどは見かけない。

Tweeterで援助者を同時進行で募集。
日本一周を企てるオネダリ上手な少女も出現すれば、
それまででは考えられなかった出会いもある。


なんとなくだが、顔は知っている。
声を聞いたことがあるばかりか、
電話で3時間以上も喋ったことだってある。
文章や写真から推しはかった性格だって、
そうかけ離れてはいないだろう。
でも、会ったことはない。

そんな人と熱海で待ち合わせ。
当初は「東京で」ということだったが、
一方的な都合で「熱海でお願い」、ということに。

なんとなく顔は知っている。
それでも半生な世界で仕込んだ材料での組み立てには限度がある。
焼きつけたイメージを改札口で探したのだけれど……。

「セイキさん!」
先に見つけたのはあちら。
大柄な男性、という勝手な造形とのギャップに、
悪い意味ではなくショックでしばらくの間立ち直れない。

霧雨の中、
「とりあえず《寛一・お宮の像》だけは押さえとかないと」
意見が一致する。
海岸沿いににあるという、
下駄で足蹴にされる女の像まで歩くことに。

無口な50前の男2人。
職業不詳な外見の2人。
ボソボソと語りながら、
片方は時折り一瞬立ち止まったりしながら熱海の町を歩く。
昭和でパンパンそうなボーリング場。
トンネルよりも隧道という名が似合う洞穴を通って。
廃墟に踏み込んでみたり。
「あそこが眺めのいい露天風呂らしいですね」
ホテルのフロントへ行くとやんわりと断られたり。
路地に迷い込んでみたり。
熱海に来ているというのに、
蕎麦屋の2階でカツ丼を食ってしまったり……。

「なにしてんだ?この人たち」
はた目にはそうとしか映らないかもしれない。
それでも、少なくとも、ぼくには充実した楽しいひと時だった。

あたみ桜のまだ残る川沿いの道を歩きながら、
小さな頃のことを考えていた。

昔から無口だった。
仲のいい友達と遊んでいてもそれほど喋る方じゃない。
ただ、5分ほどの沈黙が訪れると、
「悪いなー」
と、思う。
それでも黙ったままだった。

今でも変らない。
少しだけ変ったところは
「通じる人には、通じる」
わかってくれるやつだけで十分。
そんな希望と決意のようなものを持っている。
彼はそんな人であるように感じ続けていた。
甘えかもしれないが。

もちろん齢を食い、
今では社交的な会話をできるようにはなったけれど。
そんなときぼくは自分である気持ちがしない。



通じる人には通じる。
この確信をもったのはNYへ来てから。
しかもホームレスになってしばらく経ってからだった。

様々な肌の色、言葉、民族的背景……。
NYを表わすとき、こんな表現がよく使われる。
加えて不信、裏切り、笑顔の裏の泣き顔……
中でもひときわ混沌としているのがホームレスの世界だ。
まことに厄介な付属物がある。

どこへ行っても日本人なんて1人もいない。
物理的は同じ島にいるわけだが、
あの人たちはここにはいない。
たったひとりの日本人だった。

時が過ぎるに従い、
「見たことあるな、あいつ」
そんな人間が段々と増えはじめる。
黒い人、白い人、浅黒い人。
交差することはあっても、
互いに立ち止まることをなかなかしない。
あちらは何かを警戒しているだろうし、
こちらは天性の無口ときている。

それでもやっぱり通じるものはある。
1人、2人、3人……。
ほころびは加速度的に広がっていく。
生涯、忘れることのできない人々と出会い、
ぼくも彼らもすこしずつ心を開いていく。

言葉はいらない。
オシでもいい。
ツンボでも構わない

ホームレスという社会こそ人間の原風景なのではないだろうか。
人種も言葉も肌の色も関係なく、
ただ生きるためだけに生きている。
弱い者は倒れ、
助ける者もいるが常に死とも隣り合わせている。
いい意味でも、悪い意味でも差別はなく、
誰もが人を人としか見ないし。
それ以上でも以下でもない。
人としてしか接する術を知らない。
あそこは本当の意味での平等社会ではなかったのかな。


知っているのに知らない人と熱海の町を歩きながら。




にほんブログ村 海外生活ブログ ニューヨーク情報
[PR]
by seikiny1 | 2010-04-21 08:52 | 日本とアメリカと
<< まばたきシャッター 傘がない >>
記事ランキング 画像一覧