ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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変化
 今日もあの音が通り過ぎていく。
 
 しばらくの間移動をして止まり、また動き始める。 
 重い車輪の音。ビン同士が触れ合う小刻みな音。
 以前では<珍しい>部類に入っていた人々が買い物用ワゴンを押し、スーパーの前には透明なプラスチックバッグに10ドルほどの獲物を入れた人々が列をなす。
 空缶などを集めリサイクルをする人の数が確実に増えている。

 これまで、この職種(?)に就く人のほとんどはホームレスか中国人のおばあちゃんだった。
 ここ数ヶ月は黒人の老婦人、メキシカンといった人たちが目立つようになってきていて、先日はグリニッジビレッジで若い東欧系の男性二人組を見かけた。その誰もが、どう見ても路上に住んでいるような格好ではないのが目に付く理由。ごく普通の生活者として空缶を集めているよう。
 空缶やペットボトルだけでは足りず、効率も悪いのだろう。空き瓶にまで手を出している人が多い。アパートの前を通り過ぎていく音はいつの間にか日常音になっていた。
 年配の人が多いことに胸が痛む。

「新しい家が売れはじめた」
「株が久々の高値をつけた」
 .........
等と言っても一般の生活事情はこんなもの。
 これを「一般ではない」という人もあるかもしれないが、僕はこれが一般だと思う。多くの人が心の中で空缶を拾っているはずだ。

 金を持つ人よりも、1ドルと、5セントと闘い続けている人の目からの方が経済の本質は見えてくるのかもしれない。
 ビル前に設置された灰皿に残された吸殻の長さ。
 スープキッチンでの食事の量、質、顔ぶれ。
 微細な値段の違いとその変化。

 確信をしているのは、
 他人のゴミ箱を覗き込んだことのある者、人前で腕を突っ込んだことのある者はその日以降、社会の見方・歩き方が変わるということ。いい意味で。「生きる」ということを真剣に考えた瞬間だから。

 ゴミ箱。
 そこには人の生活のすべてが詰まっている。
 「汚い」という人もいるだろうが、汚いのが人間なんだから。その汚いもの、身の回りに置きたくないものを出したのは人間に他ならず、汚くしているのは、汚いと決めてかかっているのは人間以外の誰でもない。
 ゴミ箱のフタを明けられることを嫌うのは、散乱させてしまう人がいるからでもあるが心のどこかで<生活を覗かれてしまうこと>を怖れている。
 たとえばゴミの捨て方から見えてくること。
 選別があまりされていないゴミ箱の前では、
「あ、ここに住む人はいい加減な人だな。今度、どんな顔か見てやろう」と思い、実際に見てみると想像と大きく違うこともない。また、そんないくつもの顔が積み重なっていき自分の中で<いい加減な人間>の典型的な顔が像を結ぶ。
 食べかけの食事の混じったゴミ箱の前では、
「なんだほとんど食べてないじゃないか。冷蔵庫にでも入れとけばいいのに、嫌いだったのかな?」そんなゴミ箱の近所にはまだまだ使える日常品なんかがよく出たり。
 ゴミは雄弁だ。それを見ただけで人々の姿勢、生活、顔、習慣、行動パターンまでがありありと思い浮かぶ。

 日本でもアメリカでも、この先議員や公職に就く人々に1年の1ヶ月間を空缶拾いで暮らすことを義務付ければもう少しいい国になっていくかもしれない。立候補の供託金なんかも自分で集めたダンボールをリヤカーで5杯分にするとか。
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by seikiny1 | 2009-08-13 00:29 | アメリカ
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