ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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さくらさく
 いつの間にか前屈みになり、早足で歩いていたということが少なくなってきた。ゆっくりと足を進めながら、上へと向けた視線の先にふくらみと彩りを増した無数の新芽を見つける。日本ほどではないけれど、確実に春の足音が聞こえてくる。

 図書館=静寂。
 この公式はここでは当てはまらない。いや、日本の図書館が静かであるというのは単なる幻想で、自分の中の記憶を美化しているのだろうか?遠い昔の出来事を許してしまうことができるように。
 たまに図書館で耳栓を使う変な男がいる。それは僕です。
 ここ数年、集中力が低下してしまったのか、何かが気にかかるとそのままズルズルと引きずり込まれてしまい、最終的にはカオスとなってしまうことがよくある。
 攻撃は最大の防御とも言うけれど、ヘッドホンをして音楽を聴こうものならそこにどっぷりとつかりこみ何も手につかなくなってしまう。その前に携帯音楽プレイヤーを持っていないし、欲しいとも思わない。
 静音ヘッドフォンというものもあるけれど、<+>で<->を駆逐し、見かけをゼロにして帳尻を合わせるというその貧困な心根が気に食わない。その前に、あまりにも高価すぎて手が出ない。ということは、これは貧乏人のひがみに過ぎない、と言われても反論できないか。

 人間の身体が本来持つ機能、精神のコントロールというものには常に驚かされ続けているが、最近では少々の話し声や、携帯の着信音にも「気づいたら耳をふさいでいた」、「顔をしかめていた」という場面がめっきりと減っている。慣れ。そのようにして人間はズレて、スレていくのかもしれないが、とにかく以前ほど凶暴に聞こえることはない。そして、そんな自分を口元に笑みをたたえながら本棚の影から見つめているるもう一人の自分がいる。

 隣りのテーブルに腰を下ろした少女達は高校生だろうか?それとも中学生か?もしかしたら大学生かもしれない。こちらへ来て20年が過ぎたというのに、いまだに人の年齢がとんとわからないことが多い。
 ひとしきりおしゃべりのあと、沈黙。ページを繰る音。本を広げる音。おしゃべり。髪を束ねるゴムの音。沈黙……。そんなことを延々と繰り返す。

「勉強しに行ってくる」と言っては遊びに出かけていた僕には、人と一緒にやる勉強の長所というのがわからない。
「わからない箇所を教えあう」
「共通の目標、そして励み」
「ライバルの存在」
 色々とあるのだろうけれど、存外「友達と一緒にいられることの楽しさ」というのが一番強いような気がする。

 彼女達の姿を見ながら、数ヶ月前の東京を迷走しはじめる。
 僕はグルメフードなんかよりジャンク、B級の方が好きで、料亭とラーメン屋で二人の友達がもめたら定食屋へ行く。やっぱり貧乏なだけか。
 そんなわけで、日本では久々にファミレス体験をしてみたくてジョナサンのガラス戸を押したのは、年明けの喧騒がやっと去ろうとしている平日夜9時ごろのことだった。
 実は「飲み放題」の文字に引きずり込まれたのだが、いくら飲み放題でもコーヒーをそんなに飲めるわけはない。人情の機微に触れることのできる人のことをきっと商人と呼ぶのだろうなどと考えながら、自分の欲を少し反省するためにコーヒーを飲む。

 通り過ぎた禁煙席にはどこか幸せなムードが漂い、照明も心なしか明るく感じたのは気のせいだろうか。ついたての隙間から見ていると回転率もいいようだ。対するこちらは喫煙席。煙のせいだけではなくどこか重苦しい空気が支配する。オーダーを終えて客を観察してみると、ほとんどは女子高校生だった。喫煙席にいるからといってタバコを吸っているわけではなく、こちらの方が気兼ねなく長居をすることができる。きっとそういう選択なんだろう。テーブルの上には飲み物、ノート、鉛筆、参考書、辞書……。時折り、ドリンクカウンターへ歩いていく。
 彼女達の姿を見ながら、よく言われるような表層的なことではなく「ひたむき」という言葉を思い出していた。

 さて、この春、彼女らの上に桜は咲いたのだろうか?
 桜はやはり入学式の頃がいい。
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by seikiny1 | 2009-03-25 08:45 | 日本
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