ニューヨーク、街と人、そして……
by seikiny1
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カード社会
 カードを書くのは、買うのは何年ぶりだろう?
 思い出せない。

 昨夜、親類急逝の報を受け、とりあえずお悔やみのカードを買いに行く。それにしても24/7(年中無休、終日営業)のファーマシーは便利だ。日本でもコンビニには数種類の香典袋が置いてあるけれど、ここでは迷ってしまうほどのカードが巨大な手紙差し状の棚を埋め尽くしている。お悔やみ用の物だけでも数十種類はあり、なかなか決めることができなかった。

 この頃、贈り物をしたり、貰ったりするときは不思議な気分になっていることが多い。

「この人にはなにがいいか?」
「どんな顔をしてくれるか?」
「この人は僕のなにを見、思いながら選んでくれたのだろう?」
「その時、どんな顔をしていたのだろう?」

 子供の頃は自分の欲しいものが欲しかった。あたりまえの話だけれど。
 贈り物の向こう側に人の顔を見ることができるようになってきたのはやっと最近のこと。
 クリスマス、バレンタイン・デー、お中元、お歳暮、誕生日、結婚記念日……。
 贈り物をやり取りする機会は無数といってもいいくらいだけれど、<義>礼的なものを除き、それはなんと素敵な習慣なんだろう。習慣というよりも、人間の奥深いところから湧いてきた本能の一部というほうが近い。
 誰かのことを思う気持ち、思いやる気持ち。それをカタチにしてみる。好き嫌いでも、金額の多寡でも、包装紙でもない。その気持ちをカタチにする、カタチにあらわしたい。目に見えぬものを見えるように、心をカタチにするために。その人のことを思いながら贈り物を選ぶ。

 ギフトレシート。
 初めてこの言葉を聞いたのはもう20年位前になる。
「???」
 なんだかわけがわからずにキョトンとした顔をしていたのだろう。店員さんは親切に説明をしてくれる。
「簡単に言えば、値段が記されていないレシートです。<サイズ>、<自分の趣味じゃない>、<あ、これ持ってる>など様々な理由で交換を希望されるお客様が多く、その際にスムーズに処理をできるようにギフトレシートを添えてプレゼントを渡される方が多いんですよ」と。
 合理的ではあるけれど、あまりにも乾燥していて寂しい。たしかに、金色のベビー服なんて貰っても困るけど……。

 毎年、クリスマス明けなどにデパートのカスタマーサービスに出来る長い列はもう見飽きてしまった。最初の頃は、並ぶ人々の顔を見るだけでホリデー気分もけし飛んでいたけれど、今ではなんの感情の動きもなく通り過ぎる。ちなみに、僕は頂き物の交換・返品をったことは一度もない。まあ、贈られることが少ない。列に並ぶのが大嫌いなどといったことが理由のほとんどを占めているのだけれど。

 子供の頃は図書券を貰うのが一番嬉しかった。しかし、もし、自分に子供ができたならば本屋へ連れて行き、時間がかかっても友達のために1冊の本を選ばせると思う。人間は勝手な生き物です。

 誕生日、結婚、結婚記念日、お見舞い、退院祝い、ありがとう……。
 そしてお悔やみ。
 実に様々なジャンルのカードがあり、その中は更に種々のデザインであふれている。カードを選び、それにメッセージを添える。

 たとえ12月26日に長蛇の列が出来ようとも、財布の中に数枚のギフトレシートが入っていようとも、アメリカのスーパーやファーマシーにこの売り場がある限り、この習慣・本能が残っている限りこの国はまだまだ捨てたものではない。欲得だけで動いているわけではない、いい国です。
 それは一枚の紙ではなく人の心。美しいもの。

 できることなら、昨夜手にした種類のカードを買いに行きたくはない。しかし、自分が生きている以上、これからも買い続けなければならないし、買っていきたい。避けて通れる道ではないし歩いていきたい。
 お見舞いのカードと同じ数の退院挨拶のカード。誕生祝のカードと同じ数のお悔やみのカード。
 そんなカードをこれから何枚書くことになるかはわからないけれど、一枚ずつ書いていこう。

 今朝になってから、少し長めのメッセージをしたためた。練習、練習……、清書。昔、習字の時間に遊んでいたことを後悔してもはじまらない。
 内容は月並みのものだけれど、それでも、一文字ずつ丁寧に心をこめて書いていたら、文字に気持ちが注ぎ込まれていくのを感じてきた。失っていたものが少しずつわが手に帰ってくる。
 便利であるのにことよせて、ついついe-mailで用事を済ますうちに失くしていたもの。長い間、忘れていた感覚。自己満足ではなく、僕の思いは通じるはず。たとえ相手が天にいようとも。

 だが、 しかし、郵便局に間に合わなかった。
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by seikiny1 | 2009-03-18 09:00 | アメリカ
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